キッチンの床材にはどのような性質が要求されるのでしょう。
昔の日本の台所は土間でしたから、炊事するときは下駄を履き、汚れは石や土にしみこんで、床掃除の心配などありませんでした。外国では靴履きの生活ですから、キッチンの床はときどきモップで拭く程度、こちらもあまり神経を使わなくてもすみます。一軒家を建てる場合は、これらの生活様式をヒントにして、なるべく掃除の負担を軽くする工夫をするといいですね。
集合住宅では、ひとつのレベルにあらゆる生活の要素が繰り広げられますから、床材を変えることによって工夫します。たとえば、綺麗な素足に直接触れるバスルームの床とは対照的です。料理をすれば、かならず油脂とタンパク質と水分の汚れが床に付着します。それに衣服の繊維がホコリとなってこびりつきます。
裸足でキッチンに立つ人は少ないと思いますが、キッチンのやっかいな汚れを他の部屋に広げないためにも、なんらかの履物を用意したほうがいいでしょう。
床材そのものは、なるべく汚れを落としやすいことが条件です。たとえばリノリウム、ビニールクロス、大理石などの滑面の床。木であればモップの使える板張り、体育館のような目の詰まった貼り方で、ウレタン塗装の床がいいですね。寄せ木、あるいはタイル状の合板も考えられます。
毎日の掃除はドライモップで十分でしょう。週に一度、設備の隙間に入りこんだホコリを掃除機で吸い取ります。滑面の床にこびりついた油汚れや、積年の黒ずみはマルセイユ石鹸をウエスに擦りつけて拭くと、驚くほどきれいに落ちます。表面を傷めることもなく、汚れ落としとワックスの一石二鳥の効果が得られます。
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