暮らしの引き出し
作る照明、食べる照明

キッチンは道具の集中するところです。そして食材の集中するところです。さらにゴミの出る場所です。ストックの必要な場所です。刃物を使い、火を使い、水を使い、風をコントロールする場所です。とても煩雑。だから、ここでは集中力が要求されるのです。

すべてが自分の手の延長のように、思いどおりに機能してくれないと、家族や自分の食べ物がイメージどおりに仕上がりませんね。火力が足りない、水の出方や排水がスムーズではない、換気が悪いなどの設備の不具合を、なにはともあれ克服するのが最優先です。

次に優先するのは、持てる道具が常に頭の中の地図にあることです。引っ越してすぐは、とにかく持てる道具を収納設備に納めるだけで精一杯かと思います。使っていくうち、手順とともに、しかるべきものがしかるべきところへ納まる。それだけでも1年はかかることでしょう。仕切りや棚板がフレキシブルに作られていないと、大がかりな大工仕事の出費がかさむ、あるいは、その場しのぎに市販のラックで継ぎ足す……ついに行き詰まります。だからこそ、最初の骨組みをしっかりと、ディテールはゆるく考えておくのです。

3番目に優先するのは、安全と清潔です。これに大きくかかわってくるのが照明です。むらなく、よく見えることが第一義で、食材の善し悪しを確かめたり、汚れ落ちを確認でき、刃物を使うときも、分量を量るときも、まちがいをおかさぬために必要です。実験室を思い出してください。まんべんなく十分な光、蛍光灯を使っています。少なくともカウンターの上、つまり作業台を照らすものは、均質で十分な光を選びましょう。蛍光管の無機質な色や形が露出するのが耐えられない人は、吊り戸棚の底に埋めこむのも一案です。天井よりも光源が近くなりますから、1灯でなくシンクの位置、刃物を使う位置、洗い籠の位置、それぞれの位置の真上に短い管を埋めこんで手元を照らします。

テーブルに料理を運び終わったら、キッチンの蛍光灯を消す。ダイニングとキッチンが同じスペースにあるとしたら、これだけでがらりと気分が変わります。間仕切りの代わりに照明で雰囲気を変えるのです。すてきでしょう?

食卓の明かりは昼光色がよいでしょう。ペンダントを低く吊るし、テーブル上だけを暖かい光でふわりと包んだり、全体をダウンライトでほんのり明るくして、食卓はキャンドルを灯すのもよいでしょう。え、暗すぎるですって? 信頼できる人の作った安全な食べ物を、明るい光のもとで確認するなんて……楽しくおいしい幸せを感じるのが食卓です。

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