バスルームの壁の話をしたいと思ったのですが、日本ではユニットバス、あるいはシステムバスが普及しており、集合住宅の場合には、壁のほとんどはFRP(繊維強化プラスチック)のようですね。選択肢は色の好みくらいでしょうか。この工法は、天井、浴槽、床、壁を工場であらかじめ成形して現場で組み立てる式なので、工事がとても早くて簡単なのです。
それにしても、外国ではあまり見かけませんね。じつは、ユニットバスもシステムバスも和製英語、東京オリンピック前の建設ラッシュ時に、日本の会社が開発したものだそうです。
壁にタイルを1枚ずつ貼ってゆく昔ながらの工法は、いまや戸建ての住宅でしか望めないのでしょうか。時間と手間がかかりますし、専門の職人が必要です。それでもやはり美しさという点では、比類なき魅力があります。
ところで、タイルの工法について長年不思議に思うことがありました。タイルとタイルの間にある溝のことを目地と呼びます。外国のタイル壁にはこの目地がないものがありました。というより、目地の印象が薄い。日本のタイル壁は、必ずこの目地が入っていますね。そして、この目地は汚れが落ちにくく、カビが生えたりして、見た目も不潔っぽい。こんなに手入れがやっかいなのに、どうして必要なの?
地震が多いから? それとも歪みの修整のため? タイルは焼き物なので、昔は形状が不揃いだったために左官仕事から出発したのでしょうけれど、いまや工業規格製品ですから、目地なし施工も可能なはずですね。現実的な理由では、タイルの数を節約するためだそうです。かたや、寸法あわせのためもあって、左官でつじつまあわせる……のですって。
もともとタイルの概念が異なるのですね。外国ではタイルを芸術品と見なします。既製品でも同じ焼き色で、さまざまなサイズに対応していなければなりません。一般的には縁取りに浮き彫りのような効果を出したり、モザイクのように紋様を作ったり、ちょっと贅沢なところでは、手描きの模様や壁画のような特別注文も珍しくありません。
いまや輸入タイルも豊富にあり、インターネットで注文することも可能な時代です。バスルームにタイルを夢見る人、ぜひこのことを思い出して、設計の段階で準備をはじめてくださいね。
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