前回に引き続き、リゾートホテルの思い出話です。アジアのリゾートには伝統的な高床式のコテージがあります。高温多湿の気候のなかでも快適に過ごすための知恵です。その様式からは、日本の昔の風習も思い出され、おおいに学ぶべきことがあります。
メイドさんは掃除の前にすべての戸や窓を開け放って風を入れておりました。ベッドまわりのコンソールの上を「はたき」でパタパタと払って、おわり。これだけで綿ぼこりは外へ吹き飛んでゆきますが、ベッドの下に積もった綿ぼこりが床を這って出てきましたよ。そうそう、客室はすべて板張りでした。
いまやなつかしい箒(ほうき)を使って、そっとそーっと掃き寄せて、床の高さと同じ位置に開口した「掃き出し窓」から、ささっと外へ。お見事です。そういえば日本の和室にもありましたね、掃き出し窓や、小さな掃き出し口。集合住宅の場合は無理ですけれど、一軒家を建てる予定のある方は「掃き出し窓」のことを設計の段階で思い出してください。掃除がぐっと楽になるはずです。
もうひとつは蚊帳(かや)です。日本の蚊帳は何畳吊りといって、部屋ごと覆う巨大なものでしたが、アジアのリゾートにあったのは真っ白のネットを天井から吊るしたものでした。蚊除けはもちろんのこと、窓を開けて眠るときに、風が直接肌にあたらないことや、朝の冷気から守ってくれるためでもあります。なによりも蚊帳越しの眺めはロマンチックで、心が静まるようです。
それは風とともに暮らすベッドルームのありかたを示唆するかのようです。
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