現状を見直すことで、将来のキッチンに必要な要素が明らかになってきます。実際にキッチンの前に立ってみましょう。カウンターは水平線です。これを基準に自分のからだを動かしながら、ものの位置を決めてゆきます。
まずは、いちばん重い鍋をひとつ両手で抱えてみます。床に置いて引き上げる。床とカウンターの間に台を置いて、そこから持ち上げる。カウンターより少し上に置いて持ち上げる。どの動作がいちばん安全に確実に持てますか。
脚、腰、腕、いずれかに負担がかかるわけですが、中腰の姿勢ではからだのバランスが悪く、腕を上げた状態から重いものを持ち上げるのは容易ではありません。つまり、重いものをこれから持ち上げるぞといった気持ちの準備ができていないのに、いきなり負荷がかかると、バランスを欠いて事故につながりやすいのです。そうやって実験してみると、意外なことに床から引っ張り上げて、次に持ち上げる動作は、気構えと動作が連動して確実です。
収納場所はもうおわかりですね。カウンター下の板底にいちばん重いものを収納します。鍋はその都度水で洗ってから使いますから、シンクの下側がよいでしょう。
ここには排水管が通っています。その分が無効ですから、不定形に残ったスペースに棚をつけたりしてもあまり有効ではありません。高さと奥行きはありますから、重いものや背丈の高いものの保管場所に好都合です。使う頻度が少ないものは重ねて、背の高いものは奥に、毎日使うものは手前に、といったぐあいに並べてみます。
鍋を出したりしまったりするのが困難になってきたら、ちょっとした大工仕事で軽減することを考えてもいいし、将来の計画に織りこむ要素と考えてもいいでしょう。たとえば底板にレールをつけて、全体の奥行きの半分くらい手前に引っ張り出せるようなもの……その頃には食生活も変わって、鍋を変えているかもしれませんが。
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