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12. 走ること、大好き!
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走ることととからだ
走るために必要な筋肉 “Scientific Running”では、走ることとからだというテーマで、走ることによってからだのなかで起こる変化について解説してきました。どの内容も重要で、ぜひ知っておきたいものなので、ここでもう一度、おさらいをしてみましょう。

まず、第2回目で“走ることと筋肉の関係”について紹介しました。走るために必要な筋肉収縮のエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)でしたね。筋肉内でATPを作る過程には、“クレアチンリン酸性”“乳酸性”“有酸素性”の3つの種類があって、それぞれが、“短距離走”“中距離走”“長距離走”に適していることなどをお話ししました。ややむずかしい内容になってしまいましたが、実際に走るときには、この知識がとても大切になってくることを理解していただければと思います。
筋肉痛に
ならないように!
次の第4回目“き、き、筋肉痛です……”では、走ることによって起こる筋肉痛のメカニズム、ストレッチング、ウォーミングアップとクーリングダウンについて勉強しました。走る動作のなかで筋肉痛になる原因は、足が地面に着地するときに、筋肉が引きのばされながら収縮するからでしたね。筋肉痛を起こさないポイントは、着地のときに、よけいなブレーキをかけないようにすることだったことを思いだしてください。

また、ウォーミングアップでストレッチングをじゅうぶんにおこなうことで、筋肉痛をやわらげ、走りのパフォーマンスを高めることができることと、クーリングダウンをしっかりおこなうことで、疲労の回復を早められることも紹介しました。筋肉痛や疲労を残さないためにも、走る前後にはウォーミングアップとクーリングダウンを、しっかりおこなうようにしましょう。
走ることと水分補給 そして、第5回目“水分って、重要です”では、熱中症の怖さと、走っているときの水分摂取の重要性について解説しました。熱中症とは暑い環境のなかでの無理な練習によって発生する、体温上昇をともなうさまざまな症状でしたね。最悪の場合は死亡してしまう例があるくらいですから、熱中症を予防するためにも、ここに出てきた“熱中症8か条”をもう一度確認してみてください。

また、そのなかでも、とくに水分摂取はたいへん重要です。水よりも飲みやすく、体内への吸収も速いので、スポーツドリンクで水分を摂取することをおすすめしたいと思います。現在、多くのメーカーからさまざまなスポーツドリンクが販売されていますが、たとえば、エネルゲンは、からだのなかの脂肪代謝をさまたげずに、エネルギー補給を効率よくできるばかりでなく、抗酸化成分であるベータカロチン、ビタミンE、ビタミンCの作用が、ランナーのからだをいたわってくれているのです。

このような効果のあるスポーツドリンクを、20分おきに、コップ1杯ほどをこまめに摂取するように心がけ、熱中症の予防策を実行し、暑い夏でも安全に、楽しく走れるようにしていきたいですね。
走ることとケガについて さらに、第7回目“ケガをしないために!”では、ランニング障害とその予防法について勉強しました。走る動作では、地面を蹴る、着地するなどの同じ動作が繰りかえされるわけですから、障害を起こす部位もかなりかぎられてきます。私たちの調査によると、ランニング障害の発生部位は、1位“膝”、2位“脛骨部(むこうずねの骨)”、3位“足アーチ(土踏まず)”でした。

これらの障害を予防するためには、走る速さ、距離、頻度などの運動要因、下肢アライメントや筋力などの身体要因、そして、走る路面やシューズなどの環境要因を配慮することが大切なのです。くれぐれも、無理のない範囲で走ることを楽しむよう心がけましょう。
生活習慣病に勝つ!
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最後に、第10回目“生活習慣病と走ること”では、豊かで便利な現代社会において深刻な生活習慣病を取りあげ、よりよい生活習慣を身につけるために、走ることをおすすめしました。 “食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群”と定義されている生活習慣病は、一般的に運動不足の人に発症しやすい傾向がとくにみられます。そこで、私たちは歩くことや走ることで、その運動不足を解消することを提案してみたいと考えたのです。走ることが不足している現代人だからこそ、もし、運動不足を感じている人にはぜひとも、この最初の一歩を踏みだしてもらいたいのです。

このように、走ることによって、からだのなかで起こっているさまざまなできごとを理解することで、病気やケガをすることなく、より健康的に、走ることを楽しむことができるようになるのです。
(文:水村 信二)


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