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『奪われし未来』の影響 WWF(世界自然保護基金)の科学顧問であるシーア・コルボーンは、世界中から届く大量の野生生物の実態調査レポートのなかから、合成化学物質が野生生物の生殖能力を阻害し、奇形を生み出していることを発見しました。 世界中に散乱する現象をまとめあげ、警告するために1991年7月ウィンスプレッド会議(米国ウィスコンシン州)をピート・マイヤースと開催しました。このときはじめて、“ホルモン作用攪乱物質”が、野生生物、ひいては人類の運命に致命的な打撃を与える可能性があることを、世界中の人々が認識しました。 そして、ジャーナリスト、ダイアン・ダマノスキは、1996年『奪われし未来』(Our Stolen Future)をこの2人との共著とういうかたちで出版し、“合成化学物質”の危険性をより多くの人々へと伝えたのです。 野生生物は一般的に、限られた地域に生息する、限られた種類の植物あるいは動物を食べて生活しています。自然界のある地域の動植物が汚染されると、それを主に食べて生きている動物も汚染されます。PCBなどに汚染されたプランクトンを魚が食べ、それをアザラシが捕食します。魚にも異変が起きますが、食物連鎖の高位置に属する動物ほど、体内に蓄積されるPCBは多くなります。 人間は、ひとつの食物だけをつねに食べつづける、ということはほとんどありません。ですから今までのところ、人類存亡の危機にまでにはいたっていませんが、大量に作り出される化学物質をきちっと調査、管理できなければ、地球上の“種の多様性”を損ない、人類にもその滅亡の脅威はおよぶことでしょう。その怖さを、コルボーンたちは指摘したのです。 それでは、具体的にどのような化学物質が、どのような害をおよぼしたり、影響が懸念されるのでしょうか。
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