環境報告書ガイド

●環境報告書って、なんだろう?
A) そもそも、“環境報告書”とはなに?
1) いつ、どこで、誰が、はじめた?
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2) 表現方法や盛りこむ内容
などの“きまり”は?
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3) 2002年春、日本での現状は?
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B) “環境報告書”の
読み方・使い方・確かめ方
1) 報告書を“読み進む”、その前に
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2) 環境報告書の構成要素に着目
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3) これだけは知っておきたい環境用語
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ゴミちゃんのイラスト
A
2)表現方法や盛りこむ内容などの“きまり”は?
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法制化されているのは、わずか数か国のみ
環境報告書をめぐって、世界中で活発な動きがみられる今日このごろ。でも、じつはこれ、出すことが義務になっているのは、ほんの数か国。ヨーロッパのなかでも、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの北欧3か国とオランダだけ、という少なさです。環境先進国といわれるドイツでは、日本のJIS規格にあたる“DIN”がガイドラインを出しています。日本でも、環境省や経済産業省が環境ガイドラインを発表しています。でも、ドイツも日本も、環境報告書が義務化されているわけではありません。

それが、なぜこれほどまでに、“報告書ブーム”ともいえるような状況になっているのでしょう? ひとつには、地球の温暖化や環境破壊の深刻化があります。このため、企業は、環境汚染の防止や環境負荷の軽減にとどまらず、環境保護やリサイクルに積極的に取り組むことが求められているからなのです。

さらに、投資家や消費者からの厳しい視線が、企業の姿勢を後押ししているという事情もあります。そこで、企業はどのような活動をしているかを、社会に対してきちんと説明するためのツールとして、環境報告書をえらぶケースが増えているというわけです。
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自主基準からスタートした欧米型
1990年代前半における欧米の環境報告書は、政府の指導を受けることなく、NGOや企業が自主基準を発展させながら作られてきました。

アメリカでは、1989年に発足した“CERES原則”の様式で、GMやコカ・コーラなど、50数社の企業が環境報告書を出すようになりました。いっぽう、NGOや環境団体が主体のCERESに対抗して、1993年にIBMやデュ・ポンなどの欧米の大企業10社が設立したのが“PERI(Public Environmental Reporting initiative)”で、こちらも独自のガイドラインにそった報告書を発表しはじめました。このガイドラインは、CERESにくらべると、企業にとって報告の負担が少ないといわれています。

ヨーロッパでは、1993年に交付されたEUの環境マネジメントシステム=EMAS(Eco-Management and Audit Scheme)が広く普及しはじめました。このなかでは、事業所単位の環境報告書の作成が義務づけられています。つまり、複数の事業所や工場をもつ企業の場合、それぞれの報告書を作成しなくてはいけない、ということ。

また、国際標準化機構(ISO)の環境国際規格(ISO14000)のシリーズに、環境報告書についての規格はありませんが、環境パフォーマンス評価のガイドラインとなっている“ISO14031”で、環境パフォーマンス評価の状況とその結果を報告形式で外部へ公表するようにすすめています。さらに、環境についての情報公開、報告、意見交換などを行う“環境コミュニケーション”にとって、最も重要な手段が環境報告書とされています。環境コミュニケーションを具体化したガイドラインとしては、 “ISO14063”が2004年9月に発行予定となっています。

自主基準がメインだった時期から、各企業の環境報告書を比較、表彰することによって、スタンダードを作る役割をになってきたのが、環境報告書大賞。広く知られているものとしては、イギリスのACCA(The Association of Chartered Certified Accoountants=英国公認会計士協会)や、EUのEEUA(European Environmental Reporting Awards)によるものがあります。
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グローバル・スタンダードに向けた動き
1997年、各国バラバラのガイドラインに頼るのではなく、共通したものを作ろうというプランがスタート。CERESを中心として、UNEP(United Nations Environment Programme=国連環境計画)やサスティナビリティ社、ACCA(イギリス公認会計士協会)、CICA(カナダ勅許会計士協会)、IRRC(投資家責任研究センター)などが加わって検討を重ねるうちに、環境面だけでなく、社会面、経済面もふくんだ3つの分野での指標により、パフォーマンスの向上を評価する方向へと変わっていきました。ここには、その3つの要素を取り入れた“トリプルボトムライン”の概念が組みこまれています。

こうして、“GRI(Global Reporting Initiative)ガイドライン”として、2000年6月、“経済的、環境的、社会的パフォーマンスを報告する、“持続可能性(サスティナビリティ)報告書ガイドライン”が発表されました。とはいえ、これはまだ完成形ではなく、発展段階のもの。あらゆる意見、いっしょに取り組む参加者に対して、門戸が開かれているものです。
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日本の環境報告書事情
日本では、2001年3月に環境省による“環境報告書ガイドライン”、同年6月に経済産業省による“ステークホルダー重視による環境レポーティングガイドライン2001”が発行されました。でもこれは、“従わなくてはならない”枠組みではなく、あくまでも指針という位置づけ。環境省のものは、国内の上場企業や500人規模の企業を対象とした全般的な網羅型で、経済産業省のほうは中小企業も対象にし、かつ利害関係者=ステークホルダーとのコミュニケーションを重視しているといったちがいはありますが、ともにISOの環境コミュニケーションのガイドライン“ISO14031”にそったものとなっています。

また、表彰制度としては、1997年にスタートした(財)地球・人間環境フォーラムと(社)全国環境保全推進連合会の共同主催による“環境レポート大賞”と、その翌年から行われている、東洋経済新報社とグリーンリポーティング・フォーラムが共同主催する“グリーンリポーティング・アウォード環境報告書賞”があります。多くの企業が前向きに取り組むためのお手伝いをしているという感じですね。
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