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11. 理想のフォームで走る
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ランニングのフォーム
ランニングの
フォームを考える
みなさんは、自分のランニングフォームについて悩んだことがありますか? ランニングフォームを矯正すれば、速く走れるようになるかもしれないとか、どうやってランニングフォームを矯正するのとか、理想のフォームとはどんな走り方なのかとか、いろいろあると思います。とくに、ランニング初級者や中級者は、フォームを気にしている人が比較的多いといわれています。

今回は、そんなランニングフォームについて考えてみたいと思います。
高橋選手のフォーム はじめに、誰もが知っている、高橋選手のランニングフォームの特徴を見てみましょう。

マラソンでは、着地の衝撃を少なくして、脚への負担をできるだけ軽くすることが、スピードを維持するうえでとても大切なのです。そのためには、歩幅をせまくし、脚の回転を速くして走る、いわゆる“ピッチ走法”が有利であるといわれています。高橋選手も脚の回転が大変速く、ほとんど上下動のない、すばらしいピッチ走法なのです。しかし、高橋選手の走法が、一般的なピッチ走法とちがうところは、短距離走のように腰高で、いわゆる腰の入った力強いランニングというところにあります。そして、このことを可能にしている秘密が、地面のキックの仕方にあるのです。

一般に腰高で速く走ろうとすると、足首のキックも使って、地面を強く蹴ることになります。しかし、足首のキックに大きく関係するふくらはぎの筋肉は、太ももなどの筋肉にくらべると小さな筋肉であり、足首のキックを使いすぎるとすぐに疲れてしまいます。そこで、高橋選手は足首のキックをほとんど使わず、着地した足を支点にして、腰を前方に移動させるようにしているのです。この走り方だと、足首はからだをささえる程度にしか使われず、大きな力を出せる太ももの筋肉を積極的に使うことができ、腰高で力強く、しかも脚の負担が少ないピッチ走法で走ることができるのです。

次の2つの歩き方でウォーキングしてみてください。1つ目は、足首で強くキックしながら、反対の足を前に出すような歩き方と、2つ目は、着地した足を支点にして、腰を前に出すようにしながら、反対の足を前に出す歩き方です。両者のちがいは感覚的なもので、わかりにくいかもしれませんが、後者の方がずっと楽に、しかも速く歩くことができるはずです。ちがいがわかった人は、高橋選手のような腰の入ったランニングができるかもしれませんね。

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また、腕振りは、高橋選手の特徴的なところです。腕を抱えるようにして、からだの前で振っていますが、よく見ると肩を中心にして、腕を前後に動かしているのではなく、背骨を中心にして、左右の肩を前に出すようにしながら、さらに腕を前に出しています。この動きが、上半身と下半身のねじれを生み、背筋がしっかり伸びて、腰の入った力強いランニングに効果的に作用しているのです。ただし、腰の動きを意識したウォーキングをできない人がこのような腕振りをすると、ただ上体が回ってしまうだけで、フォームを崩す原因になることもあるので注意してください。

マラソンシーズンには、多くの一流選手のフォームをテレビ放送で見ることができます。その選手たちのフォームが、高橋選手のフォームとどうちがうのかを考えながら観戦するのも楽しいのではないでしょうか。
(文:塩田 徹)


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