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■ | 記録を生み出す背景 | このように、100mとマラソンで世界記録が更新されるためには、素質にもとづく才能の開花のみならず、選手のあらゆる側面をサポートするスポーツ科学の関与、そして選手の走るトラックやコース、あるいは選手が身につけるシューズやユニフォームなどの用器具の改良、新しいトレーニング施設・機器の開発によるトレーニング環境の充実、効果的な栄養補給(水分補給をふくむ)などがあげられます。また、最近の記録の向上には、プロ化による選手の高いモチベーションによる影響も見のがすことができないでしょう。 | ||||||
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■ | 世界記録を演出する“高速 トラック”と“高速コース” |
選手の“記録をつくりたい”という切なる願いをかなえるために、選手が走るトラックやコースに走りやすさを追求した、さまざまな工夫がされていますが、そのことが近年の100mやマラソンの世界記録誕生に、きわめて大きな影響をおよぼしているといわれています。
1991年に東京の国立競技場でおこわれた世界選手権の男子100m決勝では、ハイテクを駆使した、より強い反発力を生むウレタンでできた“高速トラック”が、C・ルイス(アメリカ)に当時の世界記録である9.86秒をもたらし、このレースでは8人中6人が10秒を切ることになったのです。 また、最近のマラソンでは主催者がカーブを減らし、アップダウンを少なくした、高低差のない“高速コース”を設定しています。このコースの典型といえるベルリンマラソンでは、1998年に男子マラソンのR・ダコスタ(ブラジル)が、1999年に女子マラソンのT・ロルーペ(ケニア)が、それぞれ世界記録を樹立しました。 |
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■ | 記録に限界はない? |
“高速トラック”や“高速コース”にみられるような選手を取りかこむ環境の改善だけでは、もちろん記録は更新しません。やはり、世界記録は、恵まれた素質をもった選手が努力と情熱によって、自己の身体能力を向上させることで生まれるのです。これまで世界記録は、ひとりの選手が樹立しては、ほかの選手がそれを目標に挑戦し、それをふたたび突破するという繰りかえしで更新されてきました。今後も、まだまだ世界記録は更新されるはずです。いったい、人はどこまで速く走ることができるのでしょうか? 人類の限界に対する興味はつきません。 そして、記録という視点から2002年のアジア大会、2003年の世界陸上、2004年のアテネオリンピックの陸上競技を観戦していくのも、おもしろいのではないのでしょうか! 参考文献 『IAAF・ATFS GOTHENBURG STATISYICS HANDBOOK』(1995) 『スポーツの記録はどこまで伸びるか?』杉田 正明(1997) 『数字から見たマラソン 2時間の壁はいつ破られるか?』高橋 進(1999) |
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(文:杉浦 雄策 〜 プロファイルはこちらへ) |
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