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06. 記録は、なぜ伸びる?
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マラソンの記録の変遷と予測
マラソンの記録は
どのくらい伸びたのか?
男子マラソンの世界記録は、1908年から約90年間に、50分(距離にして約12km)も大幅に短縮されました。世界記録は、アベベ(エチオピア)を筆頭に、日本人をふくむ多くの選手たちによって更新され、1967年にはD・クレイトン(カナダ)が2時間10分を切りました(2時間9分36秒)。しかし、その後、記録の伸びがゆるやかになり、現在の世界記録は、1999年にK・ハヌーシ(モロッコ)が出した2時間5分42秒となっています。

一方、女子マラソンの世界記録は、1926年から約70年間に、なんと70分(距離にして約15km)も短縮されました。その間、“マラソンは女性には過酷すぎる”といわれたりした時代もありましたが、世界記録はすさまじい勢いで更新され、1971年にはE・ボナー(アメリカ)が3時間を切り(2時間55分22秒)、そして、1979年には、G・ワイツ(ノルウェー)が2時間30分の壁を突破しました(2時間27分32秒)。その後、女子も男子と同様に記録の伸びがゆるやかになり、現在の世界記録は、1999年にT・ロルーペ(ケニア)が出した2時間20分43秒となっています。

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男女マラソン世界記録の変遷のグラフ。驚異的な記録更新ペースが、男子で1970年ごろ、女子で1980年ごろからゆるやかになるのがわかります(グラフは、IAAFによって公認されている記録をもとに作成)。
マラソンの記録は
どこまで伸びるのか?
このように、男女ともマラソンの世界記録は、最初の50年間に驚異的なペースで短縮されてきました。これはマラソンを専門的におこなう選手が少なかったため、競技レベルがけっして高くなかったことから起こる現象と考えてよさそうです。そして、記録があるレベルに到達すると、グラフで見られるように、その後はゆるやかに伸びていくことになります。

このゆるやかな傾きから、将来的に予測される世界記録は、男子マラソンでは2時間4分台、女子マラソンでは2時間16分台となるでしょう。今後、男子より女子のマラソンで、世界記録誕生のアナウンスが多く聞けることになりそうです。
(文:杉浦 雄策)


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