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06. 記録は、なぜ伸びる?
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100mの記録の変遷と予測
スポーツの花形、陸上競技! 2000年シドニーオリンピックの女子マラソン、高橋 尚子選手の金メダル、2001年エドモントン世界陸上の女子マラソン、土佐 礼子選手の銀メダル、400m障害の為末 大選手の銅メダルなどなど、日本人選手の大活躍で、私たちの身近な話題になっている陸上競技。

そんなスポーツの花形、陸上競技を、今回は100mとマラソンの2種目について、これまでの記録の変遷と、これからの記録の展望をしながら、なぜタイムが上がっていくのかについて、考えてみたいと思います。
100mの記録はどのくらい
伸びたのか?
まず、男子100mの世界記録は、1932年から約70年間に、0.85秒(距離にして約8m)も短縮されました。1960年にA・ハリー(旧西ドイツ)が10秒0(手動計時)で走ったとき、それは人類が走るスピードの壁(限界)といわれました。しかし、1968年にはJ・ハインズ(アメリカ)によって、その10秒の壁が破られ(9秒95)、男子100mは9秒台に突入したのです。その後、30年間、100mの世界記録はアメリカの選手を中心に更新され、1999年、M・グリーン(アメリカ)がだした9.79秒が、現在の世界記録となっています。

次に、女子100mの世界記録は、1952年から約50年間に、1.69秒(距離にして約14m)も大幅に短縮されました。1977年にM・エレスナー(旧東ドイツ)が女子ではじめて11秒を切り(10.88秒)、1988年にはF・G・ジョイナー(アメリカ)が、10.49秒の世界記録を樹立しました。これは、1984年にE・アッシュフォード(アメリカ)がだした10.76秒を、一気に0.27秒も更新するという驚異的な世界記録だったのです。そして、この記録は、13年たった現在も破られていません。

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男女100m世界記録の変遷のグラフ。破線部分が将来的な“究極の世界記録”を予想しています(グラフは、IAAFによって公認されている電気計時記録をもとに作成)。
100mの記録はどこまで
伸びるのか?
グラフで見られるように、男女とも100mの世界記録は、この半世紀で順調に短縮されてきました。しかし、これからは記録の伸びが頭打ちになってくると思われます。事実、現在の世界記録をさまざまな角度から分析してみると、すでに人間の能力のほぼ限界に達していることがわかります。

これまでの記録の伸び方と今後の伸び率から試算し、選手やコーチの意見をくわえて判断してみると、将来的に予測される“究極の世界記録”は、男子100mでは9.60〜9.69秒、女子では10.40〜10.49秒の範囲となるでしょう。したがって、現在の世界記録から見てみると、とくに女子で、世界記録の更新が非常にむずかしい状況にあるといえるのです。
(文:杉浦 雄策)


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