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05. 水分って、重要です
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夏の熱中症にご用心
夏のからだに必要
な水分摂取
暑い夏をむかえると、クーラーなしでは生きていけないのではないかと思うほど、人のからだは暑さに対して抵抗力がなくなってきているようです。私たちは恒常性の働きによって、体内の温度を保つために、汗をかき、水分をヒフから蒸発させています。汗の量が増えると脱水状態になり、血液中の水分がなくなるため、粘っこく流れにくい血になってしまいます。すると、からだを動かすエネルギーが筋肉まで運べなかったり、疲労物質である乳酸を除去できなくなります。この状態が夏バテを引きおこす原因のひとつで、ひどい場合には熱中症になりかねません。

からだの約60%が水分である人にとって、生命活動を快適に維持していくためには、賢い水分摂取が必要になってきます。“食べ物を食べなくても数か月は生きていけるけれども、水なしでは7日間程度で死んでしまう”とまでいわれているほど、からだにとって水分は重要なのです。
WBGTで熱中症予防 毎年、梅雨明けの何日間かは連日、熱中症で倒れ、病院に運ばれた人の記事が新聞をにぎわしたりします。この熱中症に対して、日本体育協会は研究プロジェクトをつくり、スポーツ活動における熱中症事故予防に関する研究班を設置しました。そして、具体的なガイドラインとして、『熱中症予防のための運動指針』を発刊しました。そのなかに、湿球黒球温度(WBGT)がでてくるのです。

このWBGTですが、屋外では“WBGT=0.7×湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度”、室内では“WBGT=0.7×湿球温度 + 0.3×黒球温度”でもとめられ、スポーツなどをおこなう環境条件の評価にもちいられます。『熱中症予防のための運動指針』では、WBGTが28℃以上の場合は、厳重警戒の区分で激しい運動を中止するようにしめしてあります。

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しかしながら、夏期におこなわれた陸上競技やサッカーの全国大会においては、雨や曇りの日をのぞいて、日中は、この運動厳重警戒範囲になることがほとんどです。たとえば、1998年に、香川県の丸亀でおこなわれた全国インターハイの環境条件でも、午後3時30分までは運動は原則中止の暑熱レベルにありました。そして、同様に、夏合宿などについても、これににたような条件になってしまうことが考えられるのです。

そこで、夏の練習、試合、合宿では、ぜひともスポーツ活動の指導者に、乾球温度計と湿球温度計を用意してもらい、WBGTを測定してもらいたいと思っているのです(とはいえ、普通の乾球温度計しかない場合が多いので、そのときは湿度に注意して、湿度が高いときには、『熱中症予防のための運動指針』の1ランクきびしい環境条件を参考にしてもらえればと思っています)。
ある大学の対校戦
での出来事
さらに、私が体験した、夏のある大学の対校戦で熱中症になってしまった選手の話をしてみたいと思います。

この日、京都の競技場は蒸し暑く、全天候型のグランドは、照りかえしで40℃を軽くこえているようでした。対校戦も終盤。午後1時過ぎ5,000mレースがはじまり、ラスト800mあたりで、ある大学の選手が蛇行しはじめました。声をかけても目はうつろで、最後の直線100mはフラフラの状態。それは、まるでロサンゼルスオリンピック・女子マラソンのアンデルセン選手のよう……ようやくゴールし、安心したと思ったら、倒れたきり起きあがれない。すぐ日カゲに移し、水で全身を冷やしながら、様子をみるが、意識がもどらない。救急車を呼び、救急病院で点滴するが、まだ回復のきざしがみられない。点滴2本目で、ようやく意識を取りもどすが、言葉を投げかけても、反応が鈍く、いくつか質問するが答えられない。意識を失っていた時間が相当あったために、一時的な記憶喪失になる。そして、2時間ほど経過してようやく記憶がもどることになった……。

こんな怖い、熱中症にならないように、水分摂取がとても重要になってくるのです。
(文:沼澤 秀雄)


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