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00 水――なくてはならないもの


 #2 汗として失う量を知り、的確に水分補給することが大切。

自分の発汗量を知る
不感蒸泄は1日600〜700ミリリットルといわれています。しかし、発汗には非常に個人差があります(4倍以上)。暑い盛りに激しい運動をすると、数時間で10リットル以上も汗をかくこともあります。
これはおよそ10kgですから、体重が60kgであれば約17%に相当します。自覚がなく、コーチなどが水分をとるように言わなければ、熱中症(熱射病や日射病)になって死んでしまいます。
そこで、スポーツをする人は自分がどのくらい汗をかくのか、スポーツをした前後で体重を計り、知っておくことが必要です。競技によって発汗量は非常に違いますから、種目ごとに計っておかねばなりません。
たとえば1時間のランニングで1kg体重が減ったとすれば、4時間ほどかけてマラソン(約40km)をしようとする場合には、約4kg(4リットル)以上が汗で失われだろうと考えられます。

計画的に水分をとる
水分の喪失が体重の2%をこえると脱水ではないものの、運動能力が落ちてくることがわかっています。逆に言えば、水分の喪失が体重の2%以下であれば、運動能力を保つことができます。
先の例では1時間に1リットル(1kg)の汗をかくので、1時間ごとに1リットルの水分を補給すれば何の問題もありません。しかし、1度に1リットルの水分をとることはからだに負担をかけ、腹痛などを起こしかねません。
そこで、20分おきに少しずつ飲むとすれば、ゴール時点で1.2リットル(2%)まで水分喪失が許されるのですから、1回に0.33リットル飲むところを0.23リットル飲めばよいことになります。もちろん、1.2リットルの喪失分は、ゴール後に“ごくごく”と補うわけです。

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多めの水分補給を考える
anim1984年にアメリカのスポーツ学会は、暑いさなかの長距離走において熱中症を防ぐガイドラインを発表しました。それによると競技会の15〜30分前に400〜600ミリリットルの冷たい水を飲み、2〜3km走ったら100〜200ミリリットルの水分をとることになっています。
マラソンにあてはめると、最大で合計5リットル近くを2時間半ほどでとることになります。2時間半ほどでマラソンを完走するようなトップアスリートは、このような多量の水分をとることは実際にはありません。
その理由は、トレーニングの結果、少ないエネルギー(熱発生)で優れた運動能力を発揮できるうえ、体脂肪率が低いために熱の発散がよいからです(体脂肪率の高い人はサウナスーツを着ているようなものです)。
からだ以外に、服装、温度や湿度、風、日差しといった条件で、水分の必要量は変わってくるものです。自分の発汗量を知っていたとしても、それ以上に汗をかくこともあります。
テニスプレーヤーはゲームの合間に必ずスポーツドリンクをとりますし、マラソンでは給水の仕方が勝負を決めることさえあります。記録の向上には、細心の注意を払って給水をすることが必要です。
一般的なアスリートにとっても、このガイドラインのように十分な余裕を持った給水計画を立てておくことが事故を防ぎ、記録をのばすためには必要なのです。
とくに子どもや初心者は、からだが激しい運動になれていないので、計画的にきちんと給水することが練習の効果を高め、記録をよくすることにつながります。




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