![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 川は、暮らす人の心の鏡だなあとしみじみ思っていると、万世橋がみえ、左手に緩やかな弧を描きながられんが造りの旧交通博物館が続きます。このまま留まってスケッチしたくなる情緒あふれる風景に名残を惜しみながら、ボートは進んでゆきます。 次の昌平橋の右側にある横穴はお茶の水分水路。上流にある水道橋分水路の水は、ここから流れてくるそうです。「さあ、神田川のハイライトに近づいてますよ」。中林さんの声とともに、視界にみずみずしい緑が広がり、川の表情もいきいき輝いてきました。目を洗われるような緑の出迎えを受けながらの川下りは、心もほぐれ呼吸も楽になってくるから、からだとは正直者です。 まもなく、左上方にJRお茶の水駅がみえました。駅のホームから、あるいは電車の窓から、四季折々に豊かな表情を見せるこの辺りの風景を見下ろすことはありましたが、川からホームを見上げるのははじめてです。ホームで電車を待つ人の視線が、なんだなんだとボートに注がれています。上流に目をやると、神田川で最もエレガントな橋といわれる聖橋がその姿を現しました。川面から見上げると、その美しさも格別で、思わず感嘆の声があがります。 柳橋からここまで、川に目もくれずに足早に橋を渡る人がほとんどでしたが、聖橋では欄干に体を預けて、のんびり水辺を見下ろしている人も。緑と水辺が調和している風景は、理屈抜きに心を和ませてくれるものです。あまりに近くにあり過ぎてその良さや大切さに気づかないもの、東京においては神田川もそのひとつだなあ、と実感しながら美しい聖橋をくぐりました。 ![]() |
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