![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ボートは滑るように隅田川を上ってゆきます。モーターの音も静かだし、窓のないオープンエア。光とそよ風を浴びながら川をすすむ感覚といったら、水鳥にでもなったような爽快さです。 前方は東京を代表する川である隅田川、振り向けば東京湾。まさに、東京の「いま」を語る風景がパノラマで広がります。天に挑むような超高層ビルのかたわらで、肩を寄せあう木造の平屋。川沿いを散歩していた園児たちがボートに気づいて歓声を上げながら、小さな手を振っています。大型の観光遊覧船とすれちがうたびに大きく揺れるボートは、まるで遊園地気分。勝どき橋に、築地の魚河岸……“水鳥視点”でながめる風景のなんと新鮮で、うきうきすることでしょう。 「さあ、ここからが神田川ですよ」、隅田川での開放感から一転、視界が狭くなりました。水上に船宿が軒を連ね、色鮮やかな屋形船が停泊するこの界隈は、かつて新橋をしのぐ花柳界として隆盛を誇った柳橋です。神田川最下流の橋梁であり、ドイツのライン川の橋を参考に造られたという深緑色の柳橋をくぐりながら、川沿いにある花街の当時のにぎわいに思いをはせ、しばしタイムトリップに浸っていたところ、向こうからブルーシートで覆われただるま船(はしけ)がやってきました。 中林さん、乗員の方と挨拶を交わしながら右壁ぎりぎりまでボートを寄せます。「荷物の中身は不燃ゴミです。ゴミの中継所がこの先、後楽園橋のあたりにあって、いまの船は、千代田区と文京区から回収された不燃ゴミを羽田沖の最終処分場に埋め立てにいくんです」。 当たり前のことなのですが、自宅の近くにあるゴミ捨て場に捨てたところが終点じゃないということを目のあたりにして、心がちくりと痛みます。いまのペースでゴミが増えつづければ、夢の島は今後30年しかもたないとのこと、リミットへのカウントダウンははじまっており、もはや見て見ぬ振りはできないところまできているようです。 ![]() |
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