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8. 陸上・長距離選手のための栄養学(その1)



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帝京大学陸上部・喜多 秀喜監督
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ある日、1人の陸上選手が私のもとへやってきました。足が痛いというアピールがほとんどなくなり、この選手はいつものように走れるようなったのですが、2〜3日たつと、ほかの陸上選手がやってきたのです。今度は、“膝が痛い”ということで、その選手が治ると、さらにちがう陸上選手がやってくるのです。不思議に思った私が、“キミたちどこの選手?”とたずねると、“帝京大学陸上部です”という答え。

“監督さんは、だれ?”“喜多さんです”“神戸製鋼の喜多さん?”“そうです、神戸製鋼で監督をしていたそうです”などと、しだいに状況がつかめてきます。

私は喜多監督とは直接の面識はないものの、現役時代の黙々と走る、すばらしい走法、朴訥(ぼくとつ)で素朴な言葉をならべるインタビューに、好印象をもっていたのです。


ミニ栄養学講座・23
陸上の長距離選手と赤血球

酸素を運んでくれる赤血球は、陸上の長距離選手にはとても大切。赤血球の数が減って、貧血にならないように、練習後の鉄分の補給は忘れずに(水前寺のり・ひじき・きくらげ・レバー・ハマグリの佃煮や缶詰・あおのり・ハチミツ・あさり・あゆ・いわのり・煮干に多く含まれています)!
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じつは、彼は上京後、陸上部のドクターをさがしていたのです。足や膝のケガが多い種目で、選手の育成にはドクターが必要だと実感していた彼は、いろいろな情報を集め、そのなかに私がいたのです。そして、彼は選手を何人かおくって、私の実力がどの程度かを試験していたそうなのです。

私は喜多さんの名前を聞いた瞬間、帝京大学の陸上部の監督になった彼に会ってみたいと思いました。当時、私は亜細亜大学の5〜6名の陸上部の選手をコンディショニングして、その年の箱根駅伝ではシード権を獲得。私の当初の目標は達成したので、そろそろほかのチームに移籍したいと考えていました。

とくに、野球・ラグビーでは全国区の帝京大学だけれども、そうではない、同好会レベルで、箱根駅伝の予選会は30位以下、選手も10名程度の、まったく無名の陸上部を強くしてみたいという興味が、私のなかにわいてきていたのです。

その選手に、監督に私のところに電話をしてもらいたいと伝えると、現役時代はスピードランナーだった彼は、すぐに電話をかけてきました。翌日には喫茶店で帝京大学の陸上部の話をしたことを、私はいまでも忘れることはありません。
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