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8. 陸上・長距離選手のための栄養学(その1) |
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箱根をめざす! |
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喫茶店で、喜多監督と私の会話が進んでいきます。私としても、ボランティアで1つの大学の陸上部をコンディショニングするのは大変なので、月数十万円程度のチームドクター費用を考えていました。 |
“監督さん、帝京の予算は、陸上部への援助費はいくらぐらいなのですか?”
“98万円です” “月?” “いえいえ、1年間です。帝京大学は無名の部にはお金を出してくれないんです” “!” その瞬間、私は、“えーい! タダでやってやる!”と決心しました。このときの私には、喜多監督が自分の給料を半分以上選手にかけるつもりで、大学からはるかに離れたところに住み、奥さんも、そんな彼を助けるために、覚悟を決めているということがしみじみ感じとれていたのです。まさに、『清水の舞台から飛びおりる』! それから、逆に私のクリニックが帝京大学陸上部のすべての費用を負担するかたちで、両者の関係がはじまったのです。 しかし、私の得たものは、そんなお金には足元にもおよばないくらい、尊く、すばらしい経験の連続だったのです。2年目には、予選会場に休日にもかかわらず看護婦さんが駆けつけ、応援するほどでした。喜多監督と帝京大学陸上部部員、私とクリニックのスタッフが、全員一心同体、かたい絆で結ばれるのを実感しました。 |
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それは、喜多監督、その人が素晴らしかったからできたことなのです。彼はほんとうに私の思ったとおりの人でした。このように、私の人生での大きな出会いは、まったくの偶然からはじまったのです。
このときから、箱根峠が、私のなかで、遠く険しいものになったのでした。まさしく“天下の剣”となったのです。 次回は、帝京大学陸上部の具体的な食事メニューについて、振りかえってみたいと思います。 |
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