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今度は、事業化を担当されている田村さんも交え、マイクロ水力発電について、もう少し詳しいお話をうかがいました。
NN:さっそくですが、水力発電というと、ダムなどの大きな施設を思い出すのですが、マイクロ水力発電は、大規模な発電所とどうちがうのでしょうか?
東京発電:水力発電は、高いところから水が流れ落ちる力で水車を回して発電します。この原理は、大規模でもマイクロでも変わりません。マイクロ水力発電は、上下水道や廃止した中小水力発電設備、発電所の未利用放水路などに設置し、いまはただ流れているだけの水のエネルギーを回収して、発電しようという設備なのです。
NN:原理が同じでも、具体的に技術的なちがいはないのですか?
東京発電:大きな河川に設置する大規模な水力発電と、小さな流れに設置するマイクロ水力発電では、おのずと「役割」がちがいます。大規模な設備では、発電量の調整機能など、電圧を一定レベルに保つ機能を機械的に制御する設備が必要ですが、小さな発電設備においては、そういった制御設備を設置しても効果はほとんどありません。マイクロ水力発電は、発電することだけに特化して、水車と発電機と必要な制御装置、故障や停電を検出した場合、安全のために停止させる保護装置だけを備えたシンプルなシステムにしました。フルオートメーションとか、「あれば便利だけど、マイクロには必要ないものは省く」、それが開発のコンセプトでした。
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大きな発電所では気づかなかった、水力発電の基本的技術を再構築するのがマイクロ水力発電。開発は、技術者として(苦労もあおりでしょうが)楽しい仕事ですね、大池さん?
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NN:小さなものを大きくするより、大きなものを小さくするほうがむずかしいのではないでしょうか?
東京発電:私たちは、東京電力で2005年に稼働しはじめた世界最大級の揚水式水力発電所[*2]「神流川(かんながわ)発電所」を建設していました。そこから、いきなり今度は世界最小の発電所を作ることになったのですから、発想の切り替えにはたいへん苦労しました。開発中にアイデアをもっていくと、「いつまでそんな大規模発電所を作っているんだ!」とすぐ却下になるわけです(笑)。システムをシンプルにして計器類を「間引く」といっても、大規模発電所ではフルオートメーションで行うことを、必要なときに計れるようにしておくなど、マイクロでは、代わりにどうやればよいのかということを考えることが重要なんですね。
[*2]現代の水力発電のなかでも、最も出力の大きいのが「揚水式発電」。電力需要の少ない夜間のうちに、余剰電力を使って水を高い貯水地まで揚げておき、需要の多い昼間に放水して発電します。東京電力が2005年に完成させた群馬県の神流川発電所は、最大出力282万キロワット、発電時の有効落差653mは日本最大級のものです。
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