その16 卵を100%利用して……キユーピーは“卵の総合カンパニー”
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■卵殻を再利用するまでの道のり

Nature Net:卵の殻……100%再資源化を達成するまでの道のりは、やはり長かったんでしょうね?

キユーピー:そうですね。私たちキユーピーが、日本ではじめてマヨネーズを製品化したのが大正14年(1925年)のことです。そして、日本人の食事が洋風化するにともない、1960年代からマヨネーズの消費量が急激に増加していきました。もちろん、会社としては、マヨネーズの需要が伸びることはよろこばしいことでしたが、必然的に、製造過程で出る卵の殻も急増してしまったのです。

当初、製造過程で出た卵の殻はすべて、埋め立てや焼却処分をしていましたが、殻の量が急激に増えると、それに対応できなくなってしまいました。マヨネーズの需要拡大をよろこぶ陰で、“もっと早く、多くの殻を処理できる方法はないか”……そんな、懸案事項が同時に浮上していたわけです。

もともと、卵の殻の成分自体は、カルシウムを多く含みアルカリ分が高いのが特徴です。埋めることで、土の成分を中和し、ミネラルなどの栄養分を補えるという、土壌改良の役割があることはわかっていました。ただ、埋め立て処分の弊害となったのは、その量と……においでした。


NN:におい……というと?

キユーピー:卵の殻を放置すると、殻に残っている白身や内側の膜が、においを発してしまいます。埋め立て処分が追いつかないことによって、近隣の住民に迷惑をかけてしまうおそれがありました。

そこで、卵殻を天日で干して乾燥させ、さらに、“かさ”を減らすために細かく粉砕することになったのです。粉砕された卵殻は、土壌改良剤として農家に販売するようになりました。それまで、畑にまいていた“石灰”と同じ役割として、使われるようになったのです。それでも、処理できたのは一部の量だけで、残りは、依然として埋め立てや焼却処分をしていました。

しかし、そうしているうちにもマヨネーズの消費は伸びつづけ、排出される殻も増加する一方でした。ようやく、1969年には、洗浄と破砕、乾燥の一連の作業を機械化し、排出される卵殻のほぼ全量を一気に粉状にできるようになりました。
畑に、卵殻からできた土壌改良材を施肥しているところ
畑に卵殻からできた土壌改良剤を施肥しているところ
NN:この時点で、マヨネーズを作るうえでの“お荷物”が新たな資源になった、ということですか?

キユーピー:じつをいうと、この時点では、まだまだ“資源としてリサイクル”という考えよりも、どうやったら“周囲に迷惑をかけずに処理できるか”という、現実問題が先にありました。そのため、しばらくは、再資源化というよりも、土壌改良剤としての販売が中心でした。

ですから、卵殻のほとんどを粉末にすることはできたものの、これをどのように使えばいいのか、困ってしまったのです。しかし、この時期の試行錯誤をきっかけに、あらためて“卵を見なおそう”という原点に立ちもどることができました。マヨネーズを製造する、卵を扱う会社として、卵のことをもっと知らなければ、ということです。

卵は、21日間温めるとヒヨコになります。つまり、1個の卵のなかには、生命を誕生させるために必要な栄養分のすべてが含まれているのです。たとえば、殻の栄養分……カルシウムを吸収することで、ヒヨコの骨格は作られていきます。そう考えると、卵というものは、なにひとつ無駄なところがない素材なのです。

そこで、マヨネーズに使用する卵黄と、卵白以外の成分……まずは、卵の殻のカルシウム分を、人間の健康のために役立てることができないか、と研究がはじまりました。

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