その11 環境問題を先取り……世界の“先端を行く”IBM
世界規模の環境管理体制を維持・運営するためには
NN
:企業規模がだんぜん大きいので、具体的な数字をきちっと出すのは、むずかしいのではないですか?
IBM
:IBMには、環境管理規定に違反した、流出事故、法違反などを報告するEIRS(Environmental Incident Reporting System:環境事故報告システム)というシステムがあります。事故があった場合、各工場、各国の事業所から、コンピューターシステムにより、24時間以内にアメリカのIBMコーポレーションに報告するようになっています。
このシステムがうまく機能しているいる理由は、3つあります。1つは、各化学薬品ごとに“何リットル漏れたら報告しろ”という基準がはっきりしていること、2つめは、タンクを地上に移設したため、状況が目でわかり、把握することができます。そして3つ目は、企業倫理規定により報告が義務づけられていることです。事故が起きても、きちっとマニュアルどおりに報告すれば、社員は罪を問われないけれど、隠匿すると解雇などの厳しい罰則があります。
なぜ、このEIRSが大事かというと、1つ事故があると、同じような事故がおよそ10か所ぐらいで起こる可能性があると考えていいわけです。それを、事故を起こした工場で隠匿してしまうと、ほかでも起きるかもしれない事故を未然に防ぐことができない、つまり、貴重な事故の経験が生かされないのです。
NN
:こういった報告システムを、世界中に浸透させて運営するのはむずかしそうに思えるのですが……。
IBM
:屋台骨がしっかりしていなけばむずかしいのですが、ポリシーに沿って管理規定を明確にしています。東京都の電話帳よりぶ厚い管理規定に、それそれの項目について記載されています。
管理規定に沿って実行したあと、非常に厳しい環境監査を社内で行っています。監査により不都合が発見されれば、管理規定にもどって改善を加えるという過程を毎年繰り返しているので、どんどん精度は高くなるわけです。
NN
:アメリカは非常に会計基準も厳しく、環境に対するリスクなどについても、明確な開示が求められていますよね。
IBM
:アメリカは、[
スーパーファンド法
]のような、土壌汚染に対する厳しい法律があります。また、おっしゃるように明確な開示が求められていますから、たとえば環境の修復に対しての引当金なども、IBMの財務諸表に明確に示しています。
NN
:たしかに『環境・ウェルビーング プログレス・レポート』を見ても、本社のアニュアル・レポートを見ても、よいことも悪いことも、すべて明確に書かれていますね。
■IBMの環境マネジメントシステム
[出典]日本IBM・HP『IBM環境・ウェルビーイング プログレス・レポート』
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