その11 環境問題を先取り……世界の“先端を行く”IBM


01
ITは環境に大きく貢献する
NN:最後に、どうしてもIBMにお聞きしたかったことがあります。インターネットを代表とする情報技術(IT:Information Technology)は、どのように社会構造を変革し、環境負荷低減に役立つのでしょうか。世界最大のコンピュータメーカーとして、どうお考えでしょうか?

IBM:まず第一に、コンピュータ自体が非常に小さくなっていることを指摘したいですね。製品が小さくなっているということは、いわゆる3R(リデュース、リユース、リサイクル)のリデュースにあたり、最も上位の資源削減対策です。

たとえば、ラップトップコンピュータ“ThinkPad”と同じパフォーマンスを実現するために、30〜40年前だと、教室一杯の大きさが必要でした。あと数年経てば、タバコの箱ぐらいの大きさの“ウェアラブル・コンピュータ”になる可能性がありますし、あと10年で、ボタンぐらいにまで小さくなるかもしれない。

よく私は例にとるのですが、“冷蔵庫や洗濯機は、手のひらにのるようになりますか?”と。これらの機器は、何十年たっても、そうはならないでしょう。

NN:そうですね。野菜や衣服が小さくならないですからね(笑)。

IBM:そう、でもコンピュータは小さくなって、メガネみたいに装着可能になることもありうるわけで、使う資源をリデュースしていくという意味では、いちばんすぐれた分野だと思います。現在は、デスクトップコンピュータがテレビぐらいの大きさなので、家電と同じように見られていますが、コンピュータ自体が、リデュースという意味では優等生なのです。

昔、コンピューターが、人間の脳と同じくらいのことをやろうと思ったら、丸ビルぐらいの大きさが必要だといわれました。いまや、脳を凌駕するかもしれない。ディスクドライブの性能は、毎年60%以上向上していて、10年前にくらべて記憶単位あたりのエネルギー消費量は1/500になっています。すごい向上率ですよね。

もう1つ挙げられることは、コンピューターを使って、いろいろなシミュレーションができるようになったのです。

たとえば、原爆実験、自動車事故などを、コンピュータ上でシミュレーションすることができます。モノを実際に使ったり、破壊したり、あるいは汚染物質を出すようなことをしなくても、コンピューター上でできるので、そういう観点からも、コンピューターが環境配慮に役立っています。

それから、e-businessです。私たちの宣伝でもお伝えしているように、いまや砂漠のまん中でもビジネスができるようになっています。たとえば、在宅勤務などがはじまれば、交通機関を使わなくてすみます。またモノを製造するときにも、必要最小限の材料で作れるので、二酸化炭素の排出や、エネルギー消費を抑えられます。あるいは、倉庫の敷地もいらなくなります。

このような社会では、“モノを所有する”ことの重要性や価値観が薄れ、利用あるいは使用することに重点が移ると考えられます。パソコンや自動車も、個人所有からリース、レンタルが主流になり、社会全体で共有するようになるでしょう。ITによる高度な情報管理は、地球規模での製品や資源使用の最小化、生産の最適化が図られ、環境問題の解決には大きく貢献していくと期待しています。

NN:いま、私たちはあまりに急激な変化についていけず、目標を見失って自信を喪失しているようです。今日の岡本さんのお話で、明るい未来の展望が描けるような気がしてきました。本日は、貴重なお話をありがとうございました!


事故は当然起きるもの……起きるからには、未然に防ぐためのシステムをきちっと構築する。しかも、法律や規制を先取りして、あらゆるリスクを想定した社内規定をつくり、明確に制度化する。昨今の医療事故など、リスクに関してあいまいになりがちな日本社会を実感していただけに、学ぶべきことが多かったインタビューでした。

いろいろな意味で“世界の最先端を行く”企業、IBM。その自覚と責任感には、感服いたしました。来月は、IBMのリサイクル工場を見学させていただくことになりました。ご期待ください!


photo
ThinkPad A21p  
■日本IBMノートブック型PCの環境目標

目標(2000年) 1999年実績
リサイクル可能化率
(プラスチック)
リサイクル可能設計部分を1995年を基準に倍増 85%増加
解体容易性 1995年を基準に解体時間を40%短縮 50%短縮
省エネルギー 国際エナジー・スター・プログラム規格への適合前機種より消費電力を改善 適合31%向上(対ThinkPad i 1400 モデル456)
梱包材削減 1995年を基準として15%削減 36%削減
[出典]日本IBM・HP『IBM環境・ウェルビーイング プログレス・レポート』

◎日本アイ・ビー・エムHP 『環境・ウェルビーング プログレスレポート』
http://www.ibm.com/jp/company/environment/



prevback to top
トップページ プライバシーポリシー サイトマップ
NatureNetは 株式会社青木コンセプト事務所 が発行するオンライン・マガジンです
Eyes on the Globe