その9 社会と“共に”考える環境対策、資生堂を訪問
消費者の環境意識は企業を動かす
NN
:使い終わった化粧品のびんは資源ゴミですが、捨てるときにすごくもったいないような気がするのですが、資生堂で自主回収するということはお考えになっていらっしゃらないのでしょうか?
SSD
:じつは、2000年の6月21日から、福岡市で“資生堂のガラスびんを当店までお持ちください”という空きびん回収システムを開始しました。資生堂商品の取扱店で資生堂化粧品のびんを回収し、2001年の4月に掛川工場で稼働予定の再処理センターで、ガラスびんを洗浄してカレットにし、ガラスメーカーに渡し、再生ガラスびんにするというシステムです。2001年の4月からは、全国に拡大展開していく予定です。
NN
:化粧品の場合、びんにも商品価値を決定する要素があると思われますから、たとえばびんを資生堂の製品内で、あるいは同業者間で共通化することなどは、むずかしいのでしょうね。
SSD
:そうですね、やはりお客さまが商品を選ばれるとき、容器のイメージが重要な決定要素になっています。容器も、デザイナーがひとつひとつデザインを決めているので芸術的価値もあります。
NN
:びんの中身、こちらの環境対応はいかがでしょうか、私たちの皮膚に直接つけるものだし、シャンプーなどは排水といっしょに自然環境にもどっていくものですから、気になります。
SSD
:シャンプーの活性剤が汚染の原因となることが問題になっていますが、排水して1週間ほどで微生物によって生分解される活性剤を開発し、使用しています。もう10年以上前から生分解性の活性剤を使っています。ただ、洗い上がりにより、含まれる活性剤がちがいますので、できる製品から使い、できないものは研究開発し、開発できたものから切り替えていきます。
また、天然原料をそのまま使ったからといって、かならずしも皮膚によいとか、安全であるというわけではありません。天然だからといって環境によいかというと、これもかならずしもそうではありません。そこはテストなどで見きわめて、うまく使っていかなくてはなりません。
NN
:資生堂が、これほど環境に配慮されていることを、意外と私たち消費者は知らないのですが……。
SSD
:(資生堂の製品の場合、お客さまが商品を選ばれる際の基準は、機能・価格・デザインのウェイトが大きく、環境対応はその後になるようです。ウェイトが大きいところに向けてPRを行いますから、環境配慮をしているにもかかわらず、お客さまに伝わっていない部分があるかもしれません。ただ、環境配慮製品を選ばれる“グリーンコンシュマー”が台頭してきて、消費者の環境意識が高くなってきたことも、実感として感じてはいます。
そういう意味で、環境教育は重要なのではないかと思っています。1999年から国連開発計画の財団法人であるZERI(ゼロエミッション研究構想)に協力して、資生堂の鎌倉工場が環境教育の場として題材を提供しています。鎌倉女学院が、資生堂鎌倉工場の環境対策を題材として研究授業を行っています。
子どものころから、環境に関してきちっとした教育を受けていれば、環境を念頭においた人たちが増え、環境対応商品の開発や流通も促進されるのではないでしょうか。行政も、環境教育をどんどん推進していってほしいですね。
■容器包装への工夫・配慮、その一例
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