その8 “あるべき姿”に挑戦する……宝酒造の環境対策


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今回は……先制攻撃を受けてしまいました!
宝酒造:お酒をつくるのは発酵ですから、自然現象です。お酒を飲んでいるときも環境には影響ありません。つまり、製造段階や使用段階では環境負荷が少ないといえます。酒類メーカーとして社会的な責任が重いと思われるのは、やはり製品を使った後の環境問題、つまり容器包装です。

Nature Net:なるほど、2000年4月から[容器包装リサイクル法]も完全実施されました。しかし、容器包装のリサイクルは行政が期待したほど進展していないようです。また、飲料メーカーのあいだでも、アルミ・スチールカン、ペットボトルのようなワンウェイ・リサイクルか、びんを何回も洗浄して使うリターナブルびんを使用すべきか、意見の分かれるところですよね。

TS:最近は消費者の生活習慣も変化し、業界もびんのデザインで消費者の注目を集めるマーケティングが進展したこともあり、ワンウェイの容器が主流になってきています。環境にとってよいのはワンウェイかリターナブル容器か、意見の分かれるところですが、宝酒造があえて取り組んでいるのが、リターナブルの促進です。

容器包装リサイクル法では、家庭から出るアルミカン、スチールカンやペットボトルなどは行政が回収してくれます。つまり、ワンウェイの場合、企業は回収費用を負担しません。リターナブルの場合は、回収費用を企業が負担し、お客さまも酒屋などにびんを持って行かなくてはならない。企業にとってはリターナブルはコストがかかり、消費者にとっては手間がかかることなのです。

しかし、環境問題の根本を考えると、個々人にとって都合のよいことが寄り集まって、社会的には都合の悪いこと、つまり環境問題が起きているのです。21世紀の循環型経済社会では、その流れを逆にしなくてはなりません。その観点から見ると、リターナブルは有用な戦略であると考えています。

日本では、びん商やびん問屋などの人々が、すでに空びん回収のノウハウをもっています。この静脈ビジネスを維持しておくことは、将来のために重要であると考えています。容器包装リサイクル法が施行されたいまでも、リサイクルの問題は解決していません。この現状をみても、リターナブルは有効な手段です。ですから、宝酒造では、逆風ですがリターナブルびんを推進しています。

しかし、経済とか社会の流れとしては、リターナブルはどんどん減っている。リターナブルを維持し、促進するためには、法律や制度などの社会支援が必要だと思います。もちろん、われわれ業界も、行政に働きかけています。

NN:……考えさせられる問題ですね。私たちも、ワンウェイ・ボトルを使っているときは、ちょっと罪悪感を感じます。

TS:“廃棄物の発生抑制”という観点から、もう1つ進めているのは、焼酎の“量り売り”です。焼酎を工場から通いタンクに入れて、酒類小売店に運び、お客さまが持ってきてくださったボトルに、タンクから必要な量だけ入れて販売するシステムです。焼酎の量り売りを導入したのは、現在小売店で100店、料飲店も入れると1,600店あまりにもなります。

NN:これはいいアイデアですね。必要な量だけ買えるし。小売り店でちょっと手間がかかるかな?

TS:少し人の手を介在させることにより、お客さまとのコミュニケーションも生まれ、固定客が増えたと小売店でも好評です。98年7月より関東地区でスタートし、99年8月には全国展開を開始しました。2年間の累計で2.7リットルのペットボトル55万本と、9万1,000枚の段ボールを削減することができました。ボトリングや容器のコストがかからないので、お客さまとしてもいちばん安く買える手法です。環境に配慮した製品も、お客さまにもメリットがないと、なかなか広がりません。


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工場直送のタンクを運び入れる
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お客さまの持ってきたボトルに入れて
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量を計ります
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売れ行きがいいというエコペット
撮影協力:リカーキング・高倉店(東京都八王子市)



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