その7 徹底した化学物質の管理……キヤノンに学ぶ


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有害化学物質を対応別に分類する
NN:[環境汚染物質排出移動登録 PRTR法]では、2001年4月から、1年間の環境汚染物質の排出量と移動量を2002年4月以降に行政に報告することになっていると聞いていますが。

CN:PRTR法対応の管理については、環境庁のパイロット事業と同時に、1997年より全事業所で開始しています。

キヤノンは日本だけでなく、世界中に工場や販売会社をもっています。それぞれの国や地域によって、管理すべき対象化学物質の数や規制内容に大きな差があります。そこで一歩突き進めて、管理対象となる化学物質を、まずキヤノングループとして統一化することにしたのです。

NN:具体的にはどのような手法がとられたのでしょうか。

CN:まず、キヤノンで使用している化学物質の種類と、法規制を受ける物質を把握しました。そのうえで、有害化学物質として重点的に管理していく1,968物質のリストをキヤノン独自で作成しました。現在、PRTR法で指定された第一種特定化学物質は354種類ありますが、キヤノンでは、それをしのぐ種類の有害化学物質を管理することに決めたのです。

有害な化学物質は、使用しないのがいちばんです。しかし、使用せざるをえないなら、なるべく使用を削減するか、管理を徹底するかです。

そこで、1,968物質をA、B、Cのランクに分けて対応を決めました。Aとは使用禁止物質、Bはすぐには使用禁止することができないので、できるだけ使用を削減していこうという物質です。Cは、塩酸のように一般的に使われている物質ですが、環境への負荷をできるだけかけないように、循環して使う、あるいは排出したときに完全に処理をするなどして使用する物質です。

NN:使用禁止、使用削減、排出管理の3つ……使用禁止とは厳しいですね。

CN:使用禁止物質を選ぶ観点は、2つあります。1つは、過去に環境問題を引きおこした経歴のある物質と、有害性が高く人体への影響、環境への負荷が大きい物質です。もう1つは、有害性が高く、現時点での管理技術ではリスクの大きい物質です。ただし、将来的に完全密閉などで使用技術が確立されれば、その時点で再検討することもあるかもしれません。

NN:具体的にはどんな例があるのでしょうか?

CN:たとえば、発ガン性が問題となったトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどの塩素系有機溶剤は、1993年から廃絶するように努め、洗浄剤としては、1997年に廃絶を完了しました。ジクロロメタンは、一部の用途のために徹底管理して使っていましたが、代替技術の開発が完了し、現在、日本地域より順次代替を進めています。

NN:Bランク、Cランクの有害化学物質削減対策は、どのようにして行われるのでしょうか?

CN:まずは、徹底管理で排出を抑制します。また、B、Cのランクに入る物質とは、削減するための技術がすでに確立したものでなくてはなりませんし、さらなる削減や管理のための、技術開発もおこたりません。

こういった削減対策も、メリットがあるから成り立つのです。化学物質を再利用することで、薬品代や処分費用などのコスト削減ができます。また、有害化学物質の使用量が少ないとなれば、企業のイメージアップにもつながります。


■1999年有害物質排出量の推移(日本地域)
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[出典]キヤノン環境報告書・2000年



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