その7 徹底した化学物質の管理……キヤノンに学ぶ


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化学物質と環境リスク
20世紀、私たち人類は多くの化学物質を造りだしてきました。私たちが、今日の便利な生活を享受できるのも、化学物質のおかげであるといっても過言ではありません。しかし、もともと自然界には存在しないものですから、大気中や海・川に出てしまうと、環境汚染を引きおこし、ひいては私たちの健康にも害をおよぼす可能性があることは、みなさんご承知のことと思います。

戦後、問題になった公害は、1970年代に公害対策基本法や大気汚染防止法など厳しい法規制がしかれ、汚染は大幅に改善されてきました。しかし、つぎつぎと造りだされる化学物質は、その数10万種類以上といわれています。

有害な化学物質をいったんでも河川に流出させてしまったり、大気に放出してしまうと、その影響は計りしれず、その原因をつくってしまった企業にふりかかる負担は膨大なものになります。こういった、環境を汚染しかねない危険性のことを[環境リスク]といいます。

そこで、製品の製造段階などで、さまざまな化学物質を扱う必要のある企業にとって重要となるのが、化学物質を厳重に管理する体制です。こういった環境リスクの重要性を深く認識し、しっかりとした管理システムを構築していることで定評のあるキヤノン株式会社を、今回は訪問することにしました。

お会いしたのは、環境技術センターの所長・木村さん、環境企画部長の佐藤さん、広報部の矢野課長さん、高見澤さんです。


Nature Net:さっそくですが、キヤノンは化学物質の管理に大変すぐれているとうかがっていますが、まずは基本的な考え方を教えていただけますか?

Canon:化学物質は便利だし、いまの世の中を動かしている大事な素材であると思います。しかしその反面、文字どおり“なにかと化合する物質”だとすれば、当然、有害性があるわけです。その前提に立って、有害化学物質の排出を極小に抑制することが、キヤノンの化学物質管理の目的です。

NN:歴史的にはどういった経緯があるのでしょう?

CN:化学物質排出抑制への取り組みは、1987年のフロン対策にはじまっています。その後1991年に、神奈川県より“化学物質安全管理指針”が示されたことから、同年、“化学物質管理要領”を策定し、取り組みを開始しました。

1992年、ブラジルのリオで開催された地球サミットで発表された、持続可能な発展のための行動計画[アジェンダ21]や、1996年にOECDが加盟各国に導入を勧告した[環境汚染物質排出移動登録 PRTR法]などの動向をふまえ、1997年、全社規定としての化学物質管理の手続きを判定し、管理のレベルアップをはかりました。


■キヤノンの化学物質管理への対応
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[出典]キヤノン資料



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