第11回 ネットワークが地球を救う?!


02 ローカルからグローバルへ


NGOの果たす役割
アメリカの政治学者P. M. ハースは、専門家集団の国際ネットワークの果たす役割を指摘し、これを“認識共同体(Epistemic Community)”と名づけました。“認識共同体”とは、国などの枠を越えて、専門的な知識をもっている人たちが人類の福祉に貢献するという認識のもと、国際ネットワークを通して考えを出し合い、あるべき解決策を提言する集団のことをいいます。

環境という地球規模の問題を解決するとなると、国単位の利害関係がかえって障害になることがあります。問題解決のためには、高度な専門知識と、地域、国家間の利害関係にとらわれない考え方が必要になります。

また、人々が問題意識をもっていても、バラバラだと社会的に影響力を行使することはできません。そこで、人々を共通の問題意識により結びつけて活動するのが、非政府組織(NGO)という存在です。

少し前までは、NGOというと、急進的な考え方の圧力団体といったイメージがありました。しかし、時代とともに、科学者、エコノミスト、法律家などの専門家が参画するようになり、高い見地から意見を述べるようになってきています。まさに、ハースのいう、“認識共同体”としての役割を果たすようになってきているのです。

1997年の[地球温暖化防止京都会議]では、国益重視の各国代表に対して、気候フォーラム、グリーンピースといった環境NGOが、地球規模の観点から意見を述べ、大胆な二酸化炭素削減を促しました。

財団法人日本環境協会によると、日本における環境NGOの数は11,595団体に上り、利益を優先しがちな企業や、制度の枠から抜け出すことのできない行政に代わって、リサイクル、自然保護、環境教育、消費・生活の分野において活動しています。

一例を挙げるならば、2005年に予定されている愛知万博の件が、記憶に新しいところではないでしょうか。自然をテーマにしたこの万博のメイン会場となる“海上の森”には、万博の主体である日本国際博覧会協会が、集合住宅など6,000戸や高速道路の建設を計画していました。しかし、環境NGOの調査により、会場がオオタカの住みかであることが判明し、 環境NGOの国際的な働きかけにより、計画を根本から見直すことが決まったのです。

NGOは、政府や企業がその基盤としてきた枠組みから離れて、自由な発想で、機敏に行動できるのが特徴です。同時に、行政、企業、個人などの連携をとりもち、多様な環境パートナーシップを構築するうえで大切な役割を果たすようになってきています。とくに、環境NGOは、環境という概念を軸にして、情報を提供し、協同で活動することのなかった行政、企業、個人という三者を結びつけ、それぞれの機能を補完しているのです。


ネットワークの構築
滋賀県の“菜の花エコプロジェクト”は、ドイツという、まったく縁もゆかりもない国の活動を聞きつけ、実際にドイツまで足を運び、その活動を参考にしました。このように、遠隔地にあっても共通の問題を抱える組織を結びつけ、よりよい解決策を模索する手段とするには、ネットワークの構築が必要です。

前回(第10回)ご紹介した、京都の環境NGO“環境市民”は、スーパー、生協などの環境配慮の状況を調査し、京都で環境商品を買える店を調べ、『買い物ガイド・この店が環境にいい』として発表しました。この活動は全国的な広がりをみせ、“グリーンコンシュマー全国ネットワーク”という組織の立ち上げにつながっています。

こうした傾向を加速させているのが、インターネットです。自分たちの地域での活動をホームページで報告し、メールや掲示板で意見を交換すれば、その活動が、“ローカル”なものではなく、普遍的な、一般的な問題としてとらえられ、そこから解決策を見出せる可能性もでてくる、というわけです。


■環境NGOの役割
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[出典]日本経済グリーン富国論



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