Digital Camera Basics

その2 従来のカメラ・写真とのちがいを理解しておこう



どこが同じで、どこがちがう?

デジタルカメラは、従来からのフィルムを使用する銀塩写真・銀塩カメラとはちがうと、なんとなくはわかっていても、実際に撮ってみてどうちがうのか、“写り方のちがい”に関しては、よくわからないという方が多いようです。

フィルムを使わずに電気的に画像を記録するので、メカニズムの相違点は多くの媒体で紹介されています。しかし写りに関してはどういうちがいがあるのでしょうか? これから先、いろいろな被写体を撮っていくにあたって、もちろん“上手に”撮るためには、このちがいを確認し、理解しておくことが大切です。



記録方法の相違点、写り方の相違点

画像の記録方法と、実際の写り方……今回はこの2点について、デジタルカメラと銀塩カメラ・銀塩写真のちがいを説明していきましょう。



 1)記録方法のちがい
デジタルフォトも銀塩写真も、光を写しとめ、一瞬を記録することにちがいはありません。どういった部分が似ていて、何がちがうのかを確認しておきましょう。


従来からの銀塩カメラでは、レンズを通った光の量を“絞り”が調節し、さらに“シャッター”がフィルムに光を当てる時間を調節しています。そして、その後ろにあるフィルムに光を当て、フィルム中の物質に化学変化を起こさせて画像を記録します。
一方、デジタルカメラは、レンズを使用することも絞りを使用することも同じで、同じくシャッターも使用します。しかし、その後ろにはフィルムではなく“CCD”や“CMOSセンサー”などといった撮像素子があり、この撮像素子が光を受けて電気信号へと変換します。さらにその電気信号をカメラ内部の回路が画像情報として変換して、メモリカード(メモリ)などに記録しているのです。
両者の大きなちがいは、光を受けるのがフィルムか撮像素子か、さらに記録されるのがフィルムかメモリか、という点です。
アナログカメラ
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レンズ
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絞り
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レンズ
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シャッター
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フィルム


デジタルカメラ
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レンズ
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絞り
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レンズ
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シャッター
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撮像素子


 2)写り方のちがい


ここまでのような解説は、デジタルカメラを扱う各種媒体で紹介されていますね。スペック上の細かなちがいは次回以降の解説に回すとして、実質的なちがい、つまり写り方はどのようにちがい、それはなぜ起こるのでしょうか? 1)の記録方法のちがいを踏まえた上で、写りのちがいを見てみましょう。


1 レンズの焦点距離のちがい

広角レンズの撮影例

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アナログカメラ

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デジタルカメラ


望遠レンズの撮影例

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アナログカメラ

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デジタルカメラ
銀塩カメラであれデジタルカメラであれ、必ずレンズを使用しています。このレンズには焦点距離というものがあります。焦点距離はレンズ部に記載されている“○○mm”、もしくは“○○mm〜□□mm”といった数字のことで、この数字により性格が異なり、写りが変わってきます。
一般的に使用されている35mmサイズのフィルムを使用する銀塩カメラでは、“50mm”の焦点距離をもつレンズを、その画角が人間の視野に近いことから“標準レンズ”と呼びます。そしてそれよりも焦点距離が短いか長いかで“広角レンズ”といったり“望遠レンズ”などと呼んでいます。では、デジタルカメラでも50mmレンズが標準レンズとなるか、というとそうではありません。標準レンズとなるレンズの焦点距離は、光を受け取る部分の面積、つまりフィルムやCCDのサイズによって異なるのです。

現在デジタルカメラで使用されている撮像素子は、35mmフィルムよりも面積が小さいため、標準となる焦点距離が短くなります。またデジタルカメラではCCDサイズが統一されていないため“デジタルカメラの標準レンズは○○mm”と、固定されていません。しかし、それではわかりにくいので35mmフィルムを使用するレンズの焦点距離に換算して、カタログなどに換算値を記載しています。35mmの銀塩カメラでは50mmレンズが標準レンズだったのに対して、コンパクトタイプのデジタルカメラではわずか数mmの焦点距離のレンズが標準レンズとなります。
Canon EOS D30のように大型の撮像素子を使用している機種では、35mmカメラに近い数値となり、約31mmが人間の視野に近い標準レンズとなります。
いままで、コンパクトカメラで記念写真しか撮ったことのない人にとっては、なかなわかりにくい部分かもしれませんが、銀塩カメラとデジタルカメラでは、使用するレンズの焦点距離が大きく異なるため、その写り具合も異なってきます。

では、35mm銀塩カメラとデジタルカメラの写りのちがいを比較してみましょう。


*左4点では、ズームレンズ付きの銀塩一眼レフカメラとコンパクト・デジタルカメラの、広角側と望遠側で比較しています。焦点距離は35mmカメラ換算値で、ほぼ同一になるようにしています。

これらは35mm銀塩カメラ換算値で約28mmの広角、約85mmの望遠で撮影したものです。それぞれまったく同じシーンで、ピントを合わせた位置も同じですが、いずれの場合も、銀塩カメラではピントが合っている部分はごくわずかで、背景が大きくぼけているのに対して、コンパクトデジタルカメラではポイントとなる被写体のほとんどの部分にピントが合い、背景もはっきりと写っています。

これには2つの要因があります。

[1]銀塩カメラでは細かく絞りをコントロールでき、絞りを開けるとピントの合う前後幅が狭くなり、背景を大きくぼかすことができます。コンパクトタイプのデジタルカメラでは細かな設定ができないものが大半で、このような写りのちがいが出ることがあります。ただし、Canon PowerShot G1やPowerShot Pro 90 ISのように、高度な撮影手法に応える機能を搭載したコンパクトタイプのデジタルカメラもありますので、すべてのコンパクトタイプがそうであるとは限りません。

[2]先に説明したとおり、焦点距離、画角のスペック状の数字が同じでも、実際には大きなちがいが生じます。たとえば35mmカメラの28mmレンズの画角は、1/3インチの撮像素子を使用したデジタルカメラでは4mmのレンズでほぼ同じ画角になります。レンズは焦点距離が短いほど、手前から遠くまで広い範囲にピントが合いやすくなるため、焦点距離の短いレンズを使用するデジタルカメラのほうがピントの合う前後の幅が広くなります。

つまり、デジタルカメラのほうが手前から遠くまでピントが合いやすく、記念写真や風景写真など、手前から遠くまでピントの合った写真を撮りたいときに便利ということになります。逆に、背景をぼかして被写体を浮き上がらせるような写真を撮りたい場合は、大きな撮像素子を搭載しているCanon EOS D30のようなデジタル一眼レフカメラか、銀塩一眼レフカメラのほうが、現状では有利ということになります。

写る範囲がほぼ同じだからといって、その写り具合までもが同じだと勘ちがいしてしまう方が多いようですが、実際には大きな写りのちがいが現れます。


*現在は、デジタルカメラも、小さな撮像素子を搭載しているコンパクトタイプと、大きな撮像素子を搭載している一眼レフタイプと、大別すると2つの系統が存在します。そのちがいなどについては、[アップデーツ2001 / 01 デジタル一眼も見慣れてきた! 2001年春現在のカメラ選び]を参照してください。


2 階調再現のちがい

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・階調のちがいとは
次に“階調再現”のちがいを見てみましょう。
階調とは白から黒までのグラデーション(白黒だけではありませんが)をどれくらい滑らかに再現して記録するか、ということです。実際の撮影では、白と黒というよりは、明るい空や反射物と、暗い影の部分などが考えられます。

現状では、銀塩写真のほうが階調の再現性に関しては上回っており、図Aのようにきれいなグラデーションを再現できます。しかしデジタルカメラでは表現できる階調のステップが256階調と決まっており、銀塩写真よりも狭い範囲でしか表現できません。少し大げさですが、図Bのようになってしまうと考えるとわかりやすいでしょう。図Bでは64階調(64ステップ)で表現しています。しかしデジタルカメラの進歩は早く、この不満はどんどん解消されてきています。表現できる階調幅にちがいはなくても、カメラが最適な階調再現になるように画像を写してくれるのです。露出などにこだわってちょっと調整してあげるだけで、とくに大きなデメリットではなくなります。この点は、より新しいモデルのほうが性能は上と考えてよいでしょう。

階調数が少ないと自然な描写を得にくくなります。が、人間の目が一度に256階調程度しか認識できないとの見解もあり、256階調のデジタルカメラで十分とする人もいます。また、再現できる輝度にも差があります。銀塩写真では幅広く白から黒までを再現できたのに対して、デジタルカメラではそれよりも狭い範囲でしか表現することができません。再現できる範囲を超えてしまったものは、たとえ実物に階調があったとしても、真っ白や真っ黒で表現されてしまいます。この範囲が狭いと、これもまた自然な描写はできません。

例えば図Cのa〜bまでの範囲しか表現できないカメラでは、それよりも外側の階調は無くなってしまい、真っ白や真っ黒で表現されてしまいます。図Cのa〜bまでの範囲のように、再現できる階調の幅を“ラチチュード(許容範囲)”といい、このラチチュードは、フィルムの性能を表現する場合や、デジタルカメラの性能を表現する場合に使用されます。もちろんラチチュードは広ければ広いほど自然な描写をしてくれます。


・露出補正で弱点をカバーする

アナログカメラ
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1:銀塩一眼レフカメラでフルオートで写したもの。水面の反射の暗い部分に浮いている葉っぱから、空を反射している部分まで、階調豊かに表現しています。空を反射している明るい部分も真っ白になることなく、わずかに階調を残しています。
2の写真のように、デジタルカメラのフルオートでは上手く階調を表現できないこともあります。これは、図Cでいうところのa〜bの範囲で再現している部分が狭いので、再現できる階調が少ないというデジカメの弱点をより強めています。

美しく階調表現ができるのが図Cでいうa〜bの範囲なわけですから、自分が表現したい部分にうまくそのa〜bをずらしてあげればいいのです。 その美しく階調表現ができる部分をずらすことを“露出補正”といいます。写真の露出、明るさを変えることで、再現する範囲を変えてしまうのです。例えば2の写真では、図Cのa〜bが図の右の方に行ってしまい、明るい部分だけ階調豊かに描写されています。

そこで、この場合はプラスの露出補正を行い、写真全体を明るくすることで、銀塩写真とくらべても遜色のない階調再現が可能になります。図Cのa〜bの範囲を左の方へずらしてあげるのです。

デジタルカメラ
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2:デジタルカメラでフルオートで撮影したもの。露出が銀塩カメラで撮ったものよりもアンダーで、水面はきれいに表現できていますが、影の部分は真っ黒になり、葉が浮いているのがわからなくなっています。
デジタルカメラ
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3:プラス1&1/3ステップの露出補正を行うことで、わずかに階調再現は銀塩写真に劣るものの、遜色のない表現になっています。影の部分の再現も良くなり、浮いた葉も表現されています。
デジタルカメラ
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4:露出補正を数値を変えてみると、再現できる部分がずれて、きれいに表現される部分が変わってきます。露出補正をしてその場で確認しながら撮影し、自分のイメージにあったカットを選びましょう。



3 ホワイトバランス

一般に広く販売されている写真用フィルムは“デイライトタイプ”のもので、日中の太陽光下で適正な色再現ができるようになっています。このデイライトタイプのフィルムを使用して室内で撮影すると、裸電球などの白熱灯光(タングステン光)下では黄色(オレンジ)に、蛍光灯下では緑色に色カブリを起こします。ストロボ光は太陽の光とほぼ同じ色なので、色カブリは起こりません。

この色カブリは、ネガカラーフィルムを使用した場合は、カラーフィルターを使用してプリントを行うため、プリント時に補正されてあまり極端には認識できないかもしれません。しかし、プリント作業を行わないカラーリバーサルフィルム、いわゆるスライドフィルムではこの色カブリが顕著に現れます。 しかし、デジタルカメラには“オートホワイトバランス”というビデオカメラで培われた技術が採用されていて、色カブリを起こしにくくなっています。

オートホワイトバランスは、その場の光に多少色がついていても、それを“白い光”と判断して、太陽の下で見るのと同じカラーバランスで再現してくれます。 ですから銀塩写真では緑カブリを起こすような蛍光灯下であっても、デジタルカメラの場合、自然なカラーバランスで再現することができます。 ただし、白熱灯光(タングステン光)下や、ロウソクの明かりなど、黄色みを帯びた写真は暖かみのあるイメージになることが多いため、黄色い色カブリはあまり極端に補正しないデジタルカメラが増えています。例えば夕日のシーンでオートホワイトバランスが過度に働いてしまうと、せっかくのオレンジがかった光線が、単なる白い光に表現されてしまうからです。

こういったホワイトバランスのとりかたは、デジタルカメラの機種によって大きく異なります。いろいろな光線下でたくさん撮影をして、自分のデジタルカメラのホワイトバランスのクセをつかんでおくと良いでしょう。


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ストロボ光で撮影したもの。下の白い台が正しく“白”に再現されています。

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銀塩カメラでカラーリバーサルフィルムを使用し、蛍光灯下で撮影したもの。ものの見事に緑カブリを起こしています。人間の目は順応性があり、蛍光灯の光を白と認識するので、普段は意識することはありませんね。

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デジタルカメラで蛍光灯下で撮影したもの。オートホワイトバランスのおかげで正しい色を再現。台の色も“白”として再現されています。

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銀塩カメラで白熱灯光下で撮影したもの。ライトの影響を受け、黄色みを帯びた再現になっています。このような色カブリは暖かみのある雰囲気を醸し出します。

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デジタルカメラで白熱灯光下で撮影したもの。オートホワイトバランスは働いていますが、ここで使用したCanon PowerShot A5 Zoomでは過度な補正は行わず、適度に黄色の色カブリを残しています。




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