何日間、水なしで生きられるか

からだから水分が失われ、これが補われない場合を脱水症と呼びます。
脱水症は大量の汗をかいた場合、下痢が続くとき、ホルモンの異常で
大量の尿が出たあと、水分の補給が追いつかないときなどに見られます。
砂漠や外洋船の遭難時、また昏睡や衰弱によって十分の水分が
摂れない場合などでも認められます。




危険な脱水量とは?

脱水量が、体重の15〜25%におよぶと死の危険性があるとされていますが、比較的涼しい季節に、じょじょに水分が失われた場合は25%に近づき、夏、汗などで急激に水分が失われる場合には15%に近づきます。

人は皮フの表面および吐く息とともに、知らず知らずのうちに1日に約1リットルの水を失い、これを不感蒸泄と呼びます。また1日に約1.5リットルの尿を出します。したがって不感蒸泄と尿から、計2.5リットルの水分が1日に失われることになります。体重60キログラムの人では15%の水分は約9リットルですから、このレベルには3〜4日で達することになります。



比叡山の千日回峰行

比叡山の千日回峰の行者は千日の回峰行を終えると、次に“堂入り”と呼ばれる9日間の断食・断水の行に挑戦されます。この行に先だって、100日間そば粉と野菜だけの生活を続け、からだを慣らしてからこの行に入ります。このときの調査では、行をはじめて1〜2日はひどいノドの渇きを感じ、脱水量は体重の2〜3%です。その後はあまり渇きは進みません。体重減少が4〜5%におよぶと口内が乾燥し、眠気におそわれ、動作ものろく、反応も弱くなります。体重減少が8%まで進むと唾液も出なくなり、舌は乾燥してはれあがり、舌がもつれて言葉がしゃべりにくくなります。この状態を“cotton mouth”と呼び、脱水限界のめやすとされます。この行では最終的に15%ほど体重が減少します。この行をした行者さんは、この50年で10人ほどしかありません。


海での遭難事件

平成3年(1991年)12月に、グアム・ヨットレースに参加した“たか号”が遭難して漂流し、27日後に7名の乗組員のうち1名のみが助かったという事件がありました。このときの記録によると、まったく飲み水が無くなったのが1月9日、その後13日、20日、25日に降ったスコールの水でなんとか命をつなげています。しかし海水を飲んだ人は助かっていません。これは海水には体液の3.5倍のイオンがふくまれ、これを排泄するためにより多くの尿を出すためです。飲み水は、それにふくまれるイオンについても注意が必要です。