水と塩分の深い関係

からだの水分は、1日の体重が1キロ以上変化しない
ことからもわかるように、ひじょうに厳密に
調節されています。そして、この体液の量以上に厳しく
コントロールされているのが、体液のイオン組成、ことに
体液にもっとも多くふくまれる塩分の濃度です。




夏バテの原因は……

細胞を取りまく細胞外液や血液など、体液の塩分濃度が濃くなると、細胞のなかから水が引き出されます。赤血球を濃い食塩水のなかに入れると、赤血球から水分が引き出されてサイズが小さくなり、極端な場合にはコンペイトウ状になります。この状態を[細胞内脱水]と呼びます。夏などに大量の汗をかくと、体液の塩分濃度が上昇し、からだの細胞からも水分が失われ、夏バテなどの原因になります。


ノドの渇きと尿で調整

脳の細胞から水分が引き出されると、これが刺激となってノドの渇きをおぼえ、水が欲しくなります。また、水分をからだから失わないように、腎臓での水分の再吸収量を増加させます。また血液のイオン濃度を下げるため、イオン濃度の濃い尿を産生し、尿から塩分を排泄します。


血液の塩分濃度が下がると

反対に水を大量に飲み、血液の塩分濃度が低下した場合には、細胞のなかへ水が入りこみます。赤血球を薄い食塩水に浮かべると、赤血球のなかへ水分が移動し、ついには赤血球が破裂して、血球の成分であるヘモグロビンが流れ出すことがあります。このような変化が生じないように、塩分をふくまない水分を多量に飲んだ場合には、まずこれ以上水分が欲しくなくなります。また、ひじょうに薄い尿を大量に産生して、体液のイオン濃度を一定に保つようになります。1リットルの水を10分以内に飲んだ場合、この水のうち800ミリリットルが、2時間以内に尿として排泄されます。


体液のコントロール

このようにからだにふくまれる水は、量だけでなくイオンや尿素などの濃度もたいへん厳密に調節されています。そのためには、水分およびイオンの摂取、尿量と尿のイオン濃度の調節がひじょうに重要な役割をもっています。