暑さと汗

人のからだは、気温が30℃以上になった場合や、
運動により体温が上昇すると、発汗がおこり、
汗が体表面から蒸発することによって体温を調節します。





汗は大切

人間はこの発汗機能がもっとも発達し、また体温の変化に応じてその発汗量を微妙に調節することができます。皮フ疾患により発汗が起こらない患者さんは、夏場、冷房なしでは体温がどんどん上昇してしまいます。このことからも発汗の大切さがわかります。人のように効率のよい汗腺を持たない犬は、舌からの水分蒸発により体温を調節します。あの姿を見れば、われわれは汗に感謝すべきかもしれません。


小さな汗腺から大量の汗

人の汗腺は皮フ全体に分布しています。その数は日本人では約250万ですが、北方民族では200万弱、熱帯の住民では300万と差があり、ほぼ2歳までを過ごした地域の気温によって決ります。汗腺のひとつひとつは、目に見えないほどひじょうに小さなものですが、それでも250万個もあるので、これを1か所に集めたと仮定すると、その大きさはタバコの箱の約半分になります。この汗腺から1時間に1リットルもの汗を分泌することができます。皮フの表面から1リットルの汗が蒸発すると、580キロカロリーの熱を奪うことができ、体温の調節に重要な役割を果たします。


左右で異なる汗の量

しかし、流れ落ちる汗は無効発汗といい、体温の調節に役だちません。からだの表面から蒸発して、始めて体温の上昇を抑えてくれます。ところが、われわれのからだは、蒸発しやすい部位からの汗が多くなるように調節されています。左を下にして寝ると、左半身の汗の量が減少し、その分右半分の汗の量が増加して、体温を調節します。わきの下がひじ掛けいすなどで押さえられているときにも、押さえられた側の汗が減り、反対側の汗の量が増加します。サウナなどで試してみてはいかがでしょう。


夏の汗

汗の量は、同じ環境条件でも夏のほうが冬よりも多く分泌されます。これは汗腺の分泌能力が、暑さに慣れてくると増加し、またからだの水分量も多くなって、必要に応じて大量の汗を分泌できるようになるためです。また、夏の汗に含まれる塩分の濃度も低くなり、汗を出してもからだへの影響が少なくなります。しかし、汗として失った水とイオンの補給は、忘れずに。