下痢と水分補給

かつて日本でも、赤痢や疫痢など、激しい下痢をともなう伝染病が
死亡原因の大きな割合を占めていました。
最近ではO-157が赤痢と同様に激しい下痢を起こし、問題になっています。




体内の水分の出納

われわれが飲み水や食事といっしょに摂る水の量は、ふつう大人で1日に約2.5リットルほどです。また食事をするとこれを消化するために、消化液が分泌されますが、その量は1日に8リットルにもおよびます。したがって1日に10リットル以上の水が消化管に出ます。ふつうはそのほとんどが小腸と大腸で吸収され、便とともに失われる水は100ないし200ccに過ぎません。ところが細菌の作用によってこの水分の吸収が妨害されると、下痢として大量の水分がからだから失われます。その結果、いわゆる脱水症状が現れます。


脱水症状とは

脱水の症状としては、体重の2〜4%程度の水が失われるとまず唇が乾き、尿が出なくなります。体重の4〜8%の脱水では、口の中も乾燥して食欲もなくなり、めまいや頭痛が加わります。さらに脱水がすすみ、体重の8%以上の水が失われると、意識障害などの神経症状が現れ、血圧が下がってショック状態になりますので、水分の補給が欠かせません。


補給する水分の組成

消化管に分泌される消化液は、血液の水分と同じ濃度のイオン(食塩など)を含んでいますので、水分の補給とともに塩分の補給が必要です。水は小腸と大腸から吸収されますので、少しでも早く胃から小腸へ移行し、また吸収されやすい組成の水をとることが大切です。最近では、スポーツドリンクなど、補液用の飲料水が注射による補液におとらず脱水の治療に効果を発揮しています。発展途上国では乳幼児の下痢による死亡率がひじょうに高く、これを予防するために、WHOでは塩分と糖を含んだ飲み水を与えることによって、多くの子どもの命を救っています。