からだからの水の出納

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にはあらず。」
ご存知の鴨長明『方丈記』、はじめの一節です。
われわれのからだに含まれる水は、体重60キロの成人では35リットルにもなりますが、この水は絶えずリフレッシュされています。普通の生活では、一日に2.5リットルの水分がからだから出ていきますが、それに見合った水分を摂るので、体重はほぼ一定に保たれるわけです。




知らず知らずに失われる水分量

からだから出ていく水分としては、皮フから知らず知らずの内に一日600ミリリットル(コップ3杯)程度の水分が蒸発していきます。また吐き出す呼気も水分を含んでいますので、一日に300ミリリットル(コップ1杯半)程度の水分を失います。乾燥した冬などでは、皮フが乾燥しますが、これは皮フから失われる水分量が増加するためです。


尿や汗から失われる水分量

尿はふつう一日に1.5リットル程度で、からだでできた老廃物質、摂りすぎたイオンや水などを体外へ排泄します。このために尿は少なくとも500ミリリットル必要です。反対に大量に水分を摂取した場合には、それに応じて尿量が増えます。便から失われる水分は、せいぜい100ミリリットル程度ですが、下痢をすると失う量が増加します。
夏場の気温の高いときや運動時には汗から水分が失われます。これは多いときには1時間に1リットル、運動選手などでは1時間に2リットルにも及ぶことがあります。



一日2.5リットルの水分摂取

水分の摂取量としては、一日三食の食事といっしょに1リットルほどの水分を摂ります。また食事を分解して代謝する際に酸化水ができますが、これはたかだか300ミリリットル程度で、これらで補うことのできない水分などを1日に1.5リットルほど飲料水として補います。汗や下痢などで失われる水分量が増加すると、のどの乾きが増して水分の摂取量が増加します。


夏の水分補給

夏の暑い時期に行った私たちの調査では、食事以外の飲料水摂取量は、健康な成人で一日に1.8リットル(男子)ないしは1.5リットル(女子)で、一回200ミリリットル強(ほぼコップ1杯)を7回ないしは8回に分けて摂取しています。
三回の食事の際、10時と3時、朝起きがけと寝るまえにそれぞれコップ1杯ということになります。