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クロスくん、大自然のなかに…… |
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『ビシュッ!』と1投目をなげるボク。だが、フライはマトに入らない。
“もう一度!”
何度も繰りかえすが、マトにはってある水を揺らすことができない。となりでは、岡本さんが水面に連続で波紋を作りだしている。
“どうして……”
“クロスくん、緊張しないで! 釣りをしてるときみたいに、リラックスして”
岡本さんの言葉に、ボクは高校までいた北海道で、友だちと釣りをしながら遊んだことを思いだしていた……『シュッ! パシャッ!』同時に、マトをゲットするボク。
“そうそう。キャスティングは見た目より、だいぶメンタルなスポーツ。だから、自分と戦って勝つことが重要なんだ。いまみたいに、それができれば……ク、クロスくん?”
そこには、キャスティングをしていることを、すっかり忘れてしまっているクロスくんがいた。
“北海道の大自然、自由な、束縛のない世界、なにもかもなつかしい……。
ちょっと現実逃避気味のクロスくんを、あたたかく見まもる岡本さんであった。 |
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