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諸星大二郎『異界録』
【引用図版・5】 『異界録』双葉社89年刊・所収 51頁



『異界録』で、行方不明の息子を追って主人公が入ってゆく異界は、地面から人間をひきこむあやしい場所で、ひきこまれた人間は、洞くつで内臓から裏返しになって、袋状にぶらさがる。
この袋から生まれなおした人間は、地上とは逆にどんどん幼児になってゆき、最後には玄牝(げんぴん)という母性に戻ってゆく[図5]。

戻ってゆく人間たちにとって、それは至福だが、主人公は玄牝にいう。
人間は老いて死ぬのが天理だ。自然に逆らうなど天理が許すはずがない。
玄牝は、ちっぽけな人間が天理をはかる愚かさと頑迷さを笑い、主人公を地上にかえす。が、彼は地上にでたとたん内臓から裏がえって死に、息子のみが助かる。
そして、息子はのち、ふたたびこの異界へかえってゆくのである。




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