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吉田秋生『櫻の園』
【引用図版・4】 白泉社文庫 94年刊・所収 161頁



そうして桜は、心の中に吹き込む。

女の子の心のナレーションを飾って散る桜は、もはや実在の桜を意味する背景ではなく、ただマンガのコマの間を漂う雰囲気だ[図4]。

日本語の助詞のように、意味をなす名詞や動詞の隙間を、その都度の雰囲気で形を変えて漂うのだ。 桜が咲く。風が吹く。花が散る。心が漂う。

ねがはくは花の下にて春死なん そのきさらぎのもち月の頃

西行『山家集』       




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