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吉田秋生『櫻の園』
【引用図版・2】白泉社文庫 94年刊・所収 125頁


“なんか あったの?”
“うん……”“ちょっとね…”

些細な会話だが、本当は“ちょっと”といった女の子の心事は、彼女にとって重要な意味をもつ。それを何げなく尋ねる女の子との間に桜が散る[図2]。

これだけで日本の読者には、彼女たちの心の距離感がふに落ちる。

花びらは、手前の女の子の背にも散りかかり、彼女たちを包んでいる。

彼女たちは、桜の中に入って、思春期の特権的な時間を共有しているのだ。




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