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森雅之『耳の散歩』 【引用図版・5】 『耳の散歩』朝日ソノラマ 98年刊・所収 7頁 |
森雅之のマンガは、絵と言葉で描かれるけど、本当は“音”なんじゃないかと思う。 音のつくる絵や言葉。 『耳の散歩』は、寝ている子どもが耳だけで見知った夜の街を散歩する短編だが、耳の聞く音でハッとするほど空間を再現してみせる。 ふだん、私などが散歩をするとき、本当は音で構成している空間もたくさんあるのに、目の記憶ですりかえてしまっているんじゃないか。 そんな風に思わせるのだ。 耳が雨の夜の車やオートバイの音を聞く絵を見て、子どもの頃、夜中に目を覚まし、聞き入った街の音の幻聴を聞いたような気がした[図6]。 |