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森雅之『音楽』
【引用図版・4】 『耳の散歩』朝日ソノラマ 98年刊・所収 42頁



雨の風景に眠る前の意識をさらわれた人が、ふと思い込むファンタジーの萌芽状態。

風景という“外界”と意識がたやすく行き来できるやすらかさ。

“遠くから”
“近く
 まで”
“全部
 雨だ”
この、わずか3コマでおこなわれる風景と人の内面の言葉の往還は、俳句のような切り詰めた定型詩の効果を感じさせる[図5]。

記号的でありながら自然を感じさせる絵と、切り詰めた言葉。

ここには、戦後日本マンガが切り開いた物語マンガの散文構造とは別種の、ただそこに置かれた器や切り花のように端正な表現がある。




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