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たむらしげる『銀河の魚』
【引用図版・4】 『スモール・プラネット』青林堂 85年刊・所収 31頁



家並みがゆったりと隣接し、こんもりした樹が植えられ、周囲には緑の丘や公園(古代遺跡?)がある。人も、ゆっくりと、多分散歩のように歩いている[図4]。

どう考えても、これは現代都会人の夢見る町だし、イメージの多層的な透明さは現代社会のものなのだ。

私が夜の散歩が好きなのは、きっとこのイメージに近い浮遊感を、どこかで感じているからだろうなぁ。たむらのマンガを読んでいると、そう思う。

夜の住宅街を、細い道を選んで歩くと、ふいに古い家屋と道にかぶさるように繁る樹木にでくわしたりする。そこだけ、異様に暗くて、めっきり見なくなった闇がたたずんでいて、びっくりしてしまう。

そこを通り抜けるとき、私の潜在意識はこうささやく。

“この向こうには、何か想像もつかない景色が待っているぞ”と。

そんな瞬間を、ふっとつかまえて、夢の中にもって帰れば、たむらの描く世界があるんだろうな。




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