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たむらしげる『銀河の魚』
【引用図版・3】『スモール・プラネット』青林堂 85年刊・所収 31頁



水の底にもうひとつ海があるという不思議な感覚は、夢の浮遊イメージと似ている。

夢で空を飛ぶとき、幾分か泳ぐ体感をもつし、ある種の人は実際、空を泳ぐ夢をみる。昔水泳部だった知人は、ビルの壁をけってターンするのだという。夢の中で、空はもう一つの水なのだ。

また、水の中にも町や自然や海があるという想像力は、昔に遡っていけば、竜宮城を連想させる。

さらに、未来的に考えるなら、スペースシャトルから宇宙遊泳しながら眺め下ろす地球のイメージを連想することもできる。

都会そのものがもつ、ガラス張りのビルの映す多層的なイメージや、映像情報がもたらす超高度の眺め、それらの運動感覚が、たむらのイメージを読む私達の想像を膨らませている。

牧歌的な家並み、汽車[図3]というレトロ感覚をもちながら、たむらがあくまで都会的なのは、イメージの重ね方に“現代都市”が感じられるからだろう。




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