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第四回「雪見」 杉浦日向子『YASUJI東京』について


雪がふっている。

明治11(1878)年の東京の、おそらく近郊だろう。

明るい雪だ。雪が白く反射して、光に満ち、世界がハイキーになったように風景がとぶ。そう、こんな雪ってあるよね。一目みて、そう思う。

光を乱反射させる雪は大量で、それだけ寒くみえる。

多分、目を細めないと近くの人の顔さえ判然としないに違いない。

この効果を画面に生んでいるのは、あまりに明るくてみえない雪、つまり描かれていない雪なのだ[図1]。



img 杉浦日向子『YASUJI東京』
小説新潮85〜86年連載
【引用図版・1】
筑摩書房 88年刊 24〜25頁


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