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第二回「アジアの雨」 坂田 靖子『アジア変幻記2 塔にふる雪』について


日本人が国内旅行より割安だという理由で外国に出かけるようになったのは、いつ頃からだろう。

私個人でいえば、やっぱり80年代に入ってから気軽に海外にいくようになった。ちょうど30代だ。もっとも、基本的に欧米に興味がなく、アジアばっかりいっている。中国、香港、タイ、バリ島。そんなとこだ。

タイにいったとき、下川裕治という貧乏世界旅行の大家と一緒で、バンコクの下町に住む彼の友達夫婦なんかと毎晩飲んじゃあ遊んでいた。そのとき、下川経由で知ったタイ人の男の生き方に「なんだぁ、こんなにいい加減に生きてもいいんだぁ」と心底感心してしまい、帰国後当分は昼寝を当然のようにとることにした。でも、そもそも起きるのが遅い私は、毎日昼寝してると夕方しか働かない。これじゃあ日本ではとても生きていけいないのだった。人間関係もタイ式に「どうにかなるさぁ」でやってたら、日本ではえらく摩擦が大きくて、あとでえらい目にあった。


img 【引用図版】
出典/坂田靖子
『アジア変幻記2 塔にふる雪』
潮出版88年刊・48頁


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