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出典/谷口ジロー『歩く人』講談社92年刊・120頁 初出/モーニングパーティ増刊 90〜91年連載



マンガは基本的に線画なので、人物は輪郭線で描かれている。表情も眉や口の線であ らわす。でも、木漏れ陽の雰囲気は、細かいドット(点の集合)で面をつくるスクリ ーントーンの粗密で表現される。斜線や手描きの点描じゃなくて、無機的なデザイン 用具を、削ってまだらに白抜きすることでマンガ的な背景にしているのだ。こういう 手法が成立するのは60年代末あたりで、ちょうど日本が高度経済成長をおえようとす る頃だった。日本人の無意識にもっていた風景や身体の「自然」観が、急速な都市化 や高度産業化の中で変貌していった時代でもある。

マンガが、ごくふつうの人の慰安の風景を描き出す、ほんの1コマにも、そんな歴史 が積み重なっている。



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