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第一回「郊外の木漏れ日」 谷口ジロー『歩く人』について


朝(といっても昼近いけど)、起きてまず近所の公園で運動する。が、車がのべつい きかう道路をまず渡らねばならない。無意識に息をつめるようにして裏の小路へ入る と、小さな植木の雛壇や他人の庭の樹々がある。アスファルトの割れ目に顔を出した 雑草なんかもある。これが、とりあえず私にとっての「自然」だ。旅行以外で出会う 自然なんて、私のような横着な人間にとったら、こんなもんである。「大自然」じゃ なくて「小自然」である。ま、それでいいじゃないの。大見得きった自然、沖縄の海 やマングローブや四万十川ばかりが自然なわけじゃない。いちばん身近な自然はじつ は自分の生理的な身体だし、その身体が出会う自然にも大小さまざまある。さまざま の中に、マンガに描かれた自然も入れてもらってちょいと話をしようというのが、こ の連載の趣旨といえばいえる。


img 【引用図版】
出典/谷口ジロー『歩く人』
講談社92年刊・120頁
初出/モーニングパーティ増刊
90〜91年連載


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