訪問・その17 東洋インキを訪ねて解明……“大豆インキ”の謎
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■大豆インキから、“ベジタブルインキ”の時代へ

NN:そういう“流れ”が、やっとできはじめた……段階なんですね?

東洋インキ:そうですね。インキ業界全体をみても、大豆インキの生産は年を追うごとに増えています。当社でも、大豆油を使用したインキの生産量は、オフセット印刷用インキ全体の60%となっていますが、ただ、これは“通過点”にすぎないと考えています。


NN:通過点というと?

東洋インキ:現在生産されている一般的な大豆インキは、大豆油(植物系溶剤)に加えて、10〜20%ほどの石油系溶剤も含んでいるのです。印刷の質を考えた場合、石油系溶剤をまったく使わないインキというのは、技術的にむずかしいものでした。

しかし、各社の研究・開発の成果もあり、現在では、石油系溶剤をまったく含まない“ノンVOC(揮発性有機溶剤)インキ”も実用化に至っています。これは、“ベジタブルインキ”とも呼ばれ、一般的な大豆インキよりも、さらに環境負荷の少ないインキということになります。
従来のインキの成分と、植物油インキの成分構成のちがい

NN:従来の石油系溶剤のインキと大豆インキ、そして、ノンVOCインキと、選択肢がさらに増えた、ということですね。

東洋インキ:そうですね。これらを“どのように選ぶか”は、印刷会社や印刷を発注する企業が決めるわけですが、印刷の結果である商品やサービスを選ぶのはあくまで消費者ですから、間接的には、消費者が“決定する”のだと考えたいと思っています。

現在では、日本のインキ製造技術と品質は、世界でもトップレベルといわれるようになっています。しかし、もうおわかりいただけたと思いますが、高品質とは、けして刷り上がりの“質”だけを指すわけではないのです。

いかに、環境や人体に有害な物質を発生させない、あるいは、低減させたインキを開発するか……印刷が存在する以上、インキが必要なわけですから、そうした優秀なインキがないかぎり、ほんとうに質の高い印刷と、それを使った商品やサービスも生まれないはずです。

私たちは、これからも、インキメーカーとして、環境問題に配慮したうえでの、新しい印刷の“質を”、縁の下で支えていきたいと考えているのです。

NN:がんばってください! 今日は、どうもありがとうございました!


[訪問後記]

大豆油を使うことで環境負荷を減らすことができるとわかってはいても、印刷の仕上がりが悪ければ見向きもされないという一方の事実。しかも、その選択は、自分たちの手にゆだねられているわけではないというジレンマ。

その障壁を技術の力で乗り越えようとする熱意……インキは、消費者の目に届くことのない(気づかない?)“製品”ながら、こうした努力の積み重ねが存在することを知っている・知っていないでは、私たちの選択にも大きなちがいが生まれるはずです。

そうした意味で、派手さはないがゆえに、逆に企業としての真摯な姿勢が伝わってくる……インキを製造している工場を見学し、大豆油を使ってインキを製造する過程を拝見し……ひさしぶりに、“社会見学”の感動を味わせていただきました。


というわけで、以下をご紹介します。

◎東洋インキ製造株式会社 ホームページ……環境への取り組みやソイインキを含めた、製品を紹介しています。
 → http://www.toyoink.co.jp/index.html

◎アメリカ大豆協会 大豆インキ(ソイインキ)のページ……ソイマーク認証の基準など、大豆油についての説明が詳しく掲載されています。
 → http://www.asajapan.org/industrial/soyseal.html


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