その11 環境問題を先取り……世界の“先端を行く”IBM


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時代の要請に応じて進化する環境ポリシー
今回訪問したのは、世界164か国で事業を展開し、1999年の連結売上高875億ドルの世界企業、IBMです。

IBMが最初の環境ポリシーを制定したのは、なんと1967年。地球環境問題がグローバルに認識されはじめた1990年には、すでに環境報告書にあたる“IBMコーポレーション 環境プログレス・レポート”の発行を開始。1991年には、環境に配慮して製品をつくる“ECP(:Environmentally Conscious Products)プログラム”をスタートさせています。そして1997年には、それまで各事業所で取得していたISO14001を、IBM本社(IBMコーポレーション)が統合認証として取得し、全世界レベルでの環境マネジメントを展開しています。

IBMの時代を先取りした環境対策は、世界を相手にする大企業の“貫禄”を感じさせます。日本IBM環境担当次長の岡本 享二さんにお会いして、IBMの環境対策における先進性、昨今話題のITが環境にどのような効果をもたらすのか、お聞きすることができました。


NN:ホームページでIBMの環境対策について拝見し、その先進性には感心しました。30年前から環境ポリシーを制定し、環境対策を行っていらっしゃいますが、なぜ、世界に先駆けてこのような環境対策を進めてこられたのでしょうか?

IBM:IBMは、1967年に、安全で健康的な職場の確保と、安全な製品の提供を掲げて、最初の環境ポリシーを制定しました。1971年には環境保全について、資源枯渇が問題になった石油ショックのころにはエネルギー・天然資源の保全について、そして1990年にはもっとグローバルな地球環境の保全についてと、30年にわたり、そのつど、社会の変化や時代の要請に応じて環境対応を先取りしながら、環境ポリシーを更新してきています。

グローバルな世界企業ですから、ヨーロッパ、アメリカ、日本のように、法律や規制が厳しい先進国だけでなく、中国や東南アジアでも、世界中のすべての国で一律の環境対応を行っています。1997年に、IBMコーポレーションがISO14001の統合認証を取得したのがよい例だと思います。

ISO14001は工場単位で取得するのが一般的ですが、規制がゆるい国などでは、それほど大きな投資をしなくても、認証が取れてしまうということに矛盾を感じました。地球環境という意味では、その国の規制がゆるやかでも、IBMの工場は先進国並みに対応しようということで、統合認証を取得しました。

そのために莫大な投資をしていますが、結果的には3つメリットがあります。

まず1つ目は、環境会計や化学薬品のデータを集めるときに、基準がバラバラだと集計しにくいのですが、世界同一基準で管理していますので、簡単に集計することができます。

2つ目は、企業の倫理性という意味で、“法律があるからやります”“法律がないからやりません”という“矛盾”を回避できます。

そして3つ目は、早め早めに対応しないと、後からの修復費用は莫大なものとなるので、事前に事を進めるほうが、経済的にも見合っているということです。


■IBMの環境ポリシーの推移
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[出典]日本IBM・HP『IBM環境・ウェルビーイング プログレス・レポート』



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