その5 製鉄の技術が“ゴミを溶かす”川崎製鉄環境事業部


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24時間体制で炉を守る
プラントに隣接したコントロールセンターには、2〜3人がコンピュータのコントロール画面と、場内各所に取りつけられたモニターカメラで監視を続けています。

NN:こんにちは!

KS:プラントに隣接したコントロールセンターでは、8時間3交代24時間体制で、プラントシステムを監視しています。このプラントはすべて、コンピューター制御されています。

NN:(疑りぶかいNNの質問がはじまります)。この溶融炉の安全性はどうなのでしょうか。危機管理体制が、しっかり組みこまれているのでしょうか。地震の多い日本ですし、新しい施設を導入する場合、どうしても気になるのですが……。 …。

KS:このサーモセレクト方式の構造は、ゴミを圧縮し、直接投入する一体型の溶融炉です。溶融炉のなかの温度を高温に保ち、ガス溶融炉内の圧力を大気より常に高くすることで、空気を吸い込まないようにすることが肝要です。一体型ですからガス漏れの危険性はまったくありませんが、ガス漏れセンサーも各所に設置されて、安全に万全を期しています。

プラント内に空気を吸い込み、酸素濃度が高くなることが危険なのですが、一定の酸素濃度になった場合、炉に吹きこむ酸素の供給を停止し、不活性元素である窒素を送りこむようになっています。万が一、このような状態になれば、ガスを燃焼させて放散塔から放散しますから、生ガスが大気に放出されることはありません。

こういった安全装置は、酸素濃度上昇時と停電時には、自動的に作動します。


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24時間体制で炉を見守るコントロールセンターの内部。


ガス溶融炉の今後は?
NN:日本ではじめて川鉄サーモセレクト方式でリサイクルプラントを立ち上げられ、今後は、どのような展開をお考えなのでしょうか。

KS:99年の9月から今年(2000年)の3月まで、千葉県と千葉市との共同研究として、千葉市の一般廃棄物を受け入れて、処理性能、施設の安定性、ダイオキシン発生量などについて実証実験をおこないました。結果、全国の地方自治体で構成する社団法人全国都市清掃会議から、技術検証・確認概要書の交付を受けました。

川崎製鉄は、産業廃棄物処理業の許可を取得していますので、今年の4月からは、この施設で産業廃棄物の処理を開始しています。

川鉄環境事業部では、[可燃ゴミ固形化燃料:RDF]や、水処理などの事業もおこなっています。ガス化溶融炉に関していえば、今後、このプラントを積極的に自治体に販売していきたいと思っています。

NN:コスト的にはどうなのでしょうか?

KS:従来型の焼却施設では、焼却炉とは別に、灰や煤塵(ばいじん)を無害化する灰溶融施設が必要です。サーモセレクト方式では、その施設が不要ですから、トータルでみると競争力のある価格です。ガス化溶融炉というと、“次世代型”とよくいわれますが、すでに実用レベルの技術であることをつけ加えておきたいと思います。

NN:今日はほんとうにありがとうございました。

ゴミの最終処分場の不足、焼却炉のダイオキシン排出量の規制、容器包装リサイクル法によるプラスチックのリサイクル義務づけなど、ゴミ処理問題は官民をあげての早急な解決策が必要です。今年は環境展示会などでも、大手企業が続々と自社の製品をアピールしているのが目立ちます。焼却施設を新しくしなければならない自治体は、各社の技術を、“うの目・たかの目”で検証しているようです。

製鉄業という重厚長大な事業から、環境ビジネスへと踏みだした川崎製鉄。広大な製鉄所のなかに建てられた赤い瀟洒(しょうしゃ)な千葉リサイクルプラントは、20世紀から21世紀への私たちの方向性をしめす、生まれたての卵のように見えました。その成長を楽しみに、しっかりと見届けていきたいと思います。


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[左]回収されたメタル [右]路盤材などに使われるスラグ


◎サーモセレクトガス溶融炉についてくわしく知りたい方 は、
 こちらを参照 してください。
 http://www.jfe-eng.co.jp/product/environment/env02_02_01.html



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