その3 “ビールからエビオス”……優等生・アサヒビールを訪問!


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今月お訪ねしたのは、いまやビールのシェアNo.1の地位を獲得し、環境問題でも最先端をいくアサヒビール株式会社です。

最近のビールの需要はうなぎ登り。これだけ需要が増え、アルミ缶を使うことが多くなったにもかかわらず、ビール会社は環境対策の優等生! とくにアサヒビールは、その積極的な環境対策が企業間でも有名です。

今回は、ビールジョッキの形で有名なアサヒビール本社で、総合品質本部、環境文化推進部の浅間 敬明さんと、広報部の嶋 愛子さんにお会いして、お話をうかがうことができました。


環境優等生は1日にして成らず
Nature Net:さっそくですが、アサビビールは、ずいぶん早くから環境問題に取り組んでいらっしゃるようですね。

アサヒビール:食品をあつかう会社ですから、環境に配慮するのは当然ですが、91年に生活環境部と生活環境委員会を設置し、環境問題に対して全社的に取り組むようになりました。92年にリオデジャネイロの地球環境サミットが開催されることもあり、積極的に対応するため専門部署を設置し取り組みをはじめたのです。

NN:それでもその後の10年、アサヒビールは廃棄物の削減、省エネルギーなどですばらしい成果を上げていらっしゃいますよね。

AB:この10年間に環境対策が進んだのは、やはり経営トップの意識が高かったためだと思います。97年の京都会議を見こんで、96年に現在は会長職にある瀬戸 雄三が、業界のトップランナーとしてなにかできないかと、経営会議で発案しました。そこで、茨城工場ですでに98.5%の再資源化が達成できているのだから、どうせなら再資源化100%を達成しようと、瀬戸が大号令をかけたのです。

NN:すでに98.5%も再資源化していたというのはすごいですね。

AB:それは、ビールかす(モルトフィード)は牛の飼料に、酵母は“エビオス”などの医薬品にと、すでに回収ルートが確立していたからです。モルトフィードと酵母は、廃棄物の8割を占めています。再資源化できていなかったのは、プラスチックと蛍光灯、乾電池などでした。再資源化をしてくれる業者を探して、自分たちの納得のいく再資源化をしてくれるかどうか、目で確かめ業者を選定しました。

工場での従業員の教育を徹底するのも大変でした。最初は、“ポリエチレン”など材料別に分別したのですが、プラスチックなどはその素材を知ることはむずかしく、失敗しました。そこで、“〜を入れてきた袋”など、使った用途によって分けることにしてみました。この方法は、だれでもわかりやすいので、廃棄物を完全に分別することができたのです。


再資源化はお得?
NN:廃棄物を100%再資源化して、利益はあるのでしょうか? アサヒビール“エコレポート”を拝見すると“環境投資・費用”のページに“工場の副産物・廃棄物再資源化費用”に約12億円かかっていると書かれていますが……。

AB:モルトフィードと余剰酵母は、売り上げに反映しています。エコレポートに出ている工場の副産物・廃棄物再資源化費用12億円は、費用から売上益を引いた純費用を掲載しています。ビールのモルトフィードは牛がよく育ち、ミルクがよく出ると評判の飼料です。しかし、農家が遠くにある場合、引き取ってもらう際に運賃などのコストがかかり、為替相場によっては海外からの安い飼料との競争で負けてしまうなど、不確定な要素があります。逆に、費用が発生してしまう場合もあります。全体的には、再資源化のために多大なお金がかかっているのが現実です。

NN:では12億円かけて再資源化したり、投資をしたりするのは、企業として環境を重視する姿勢の表れなのでしょうか?

AB:その通りです。もっと安価に処理する方法もあると思いますが、企業の社会的責務として、コストをかけても再資源化を行っているわけです。 また、将来安定的に再資源化の道が続くとは限りませんので、常に新たな再資源化の道を模索しています。環境技術部で、モルトフィードを炭にするなどの研究も怠らず進めております。


アサヒビールの[環境投資・費用]

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[出典]アサヒビール[エコレポート]



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