第7回 環境会計と環境報告書


04 環境報告書を作成し、公表する


さて、数回にわたり企業の環境保全活動について解説を進めてきましたが、企業はどのようにしてその努力を公表し、社会的な理解を獲得すればよいのでしょうか。

企業の環境情報を知りたいと思うのは、消費者、顧客、従業員、取引先、地域住民、投資家、銀行などの企業活動にまつわる利害関係者です。

消費者や顧客に対しては、広告や、商品に貼り付ける[エコラベル]などが有効な手段だと思われます。

一方、投資家や銀行は、環境保全体制が企業の将来の収益に関わるため、そこで働く従業員は労働上の安全のため、また地域住民は環境汚染などの心配があるため、企業側からのより詳しい説明が必要だと思われます。そこで威力を発揮するのが、近年多くの企業が発行しはじめた、“環境報告書”です。

企業の業績を知るために、投資家は、まず決算報告書を利用します。そして、これからは環境報告書も同じように必要とされるものになるでしょう。デンマークやオランダのように、海外では環境報告書の作成が法制化されている国もあります。


環境報告書で、なにを報告するか?
統一された環境報告書のフォーマットはまだ存在しませんし、業種や目的によって報告するべき内容は異なります。また、各企業が強調したい環境対応がまちまちであったり、環境報告書をだれに提示するかで報告する内容も異なっているようですが、環境報告書に関しては、以下の図のような構成と要点があげられます。

環境会計や環境報告書は、まだまだ発展途上です。しかし、環境保全型社会を構築するうえで有効な手段であり、日本や世界で統一の基準を設定し、企業を環境という観点から比較することができれば、地球環境の改善も加速するものと思われます。そして、環境会計や報告書がより洗練されたものになれば、ネガティブにとらえられていた環境対策費用は、ポジティブなものになっていくことでしょう。

■環境報告書の構成と要点

定性的情報:環境保全に関するビジョン
緒言 企業概要 環境方針 環境目的・目標 環境問題についての見解 地域社会との関係

管理情報:環境保全活動がどのように行われているか
環境マネジメントシステム 環境リスク管理 サイトごとの実施状況

定量的情報:環境への影響と配慮を定量的に表す
環境指標と目標値 エネルギー・資源利用 規制・許認可 財務指標(環境会計など)

製品情報:製品製造やサービスの環境パフォーマンス改善など
製品製造工程・サービス

その他:利害関係者との協議、環境報告書の様式選択の理由、用語定義、環境関連の表彰 第三者の意見

『環境会計のしくみ』より作成


◎参考HP
環境会計システム導入のためのガイドライン(2000年版)
http://env-ac1.eic.or.jp/

先進的な環境会計の例
宝酒造の環境会計
単位を統一することのむずかしい環境会計で、“エコ”という独自の単位で
環境保全活動の進捗度を表現
http://www.takarashuzo.co.jp/


イトーヨーカドーの環境会計
取り出すことのできる項目に限り、環境対策費用と効果を提示
http://www.itoyokado.co.jp/company/profile/csr/activity.html


先進的な環境報告書の例
キヤノンの環境報告書
環境負荷を定量的に示したタイプIIIのエコラベルを製品ごとに公開
http://www.canon.co.jp/ecology/index.html


[参考資料]
『全図解・環境会計のしくみ』 井上 壽枝(中央青山監査法人環境監査部部長)・ 著 あさひ出版・2000年刊



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